小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
文目ゆうき
文目ゆうき
novelistID. 59247
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

睡蓮の書 一、太陽の章

INDEX|2ページ/42ページ|

次のページ前のページ
 

◆一、太陽の章



 世界にひとつずつのもの、
 陽は一日に、昇り落つ。
 月は一月に、満ち欠ける。
 河は一年に、満ち引ける。
 この地にただひとすじの河、
 南から北へと注ぐこの河の、満ちの始めは、新年の証。
 暁のころ、東の空に天狼星《セプデト》が輝き、太陽を先導するそのときに、
 新しい年、はじめの朝が、明ける。

 ラアは、くりくりした黒の瞳で、天高くのぼる太陽を見上げた。
 冬至を越え、大河の水がすっかり引いた、萌芽の季節。
 新しい年まで、あと、半年。
 半年経てば、ラアは正式な神《ネチェル》と認められ、大いなる力を得るのだ。
 ぐるり、と辺りを見回す。
 広い、広い神殿。
 数え切れないほどの部屋は今、そこに住む者をもたない。
 かつてたくさんの神々で賑わったのだろう、この神殿に、今は――。
 ラアは大きく息を吸い込むと、胸に湧き出す感情を追い払うように、駆け出した。

 千年続く、北の神々との戦。
 神々の王「太陽神ホルアクティ」は、十年前の戦で敵神らを退け、
 今はここ、中央神殿で、戦の傷を癒していると言われている。
(本当はもう、父さんは、いない)
 でもそれを、悟られてはならない。
(分かってる。けど……、)
 もっと、外を見たいんだ。