睡蓮の書 一、太陽の章
――ホテア。汝の望むすべてのものが、汝の前に与えられんことを」
少女はぱちりと瞬くと、ずっと感じてきたぬくもりと聞き慣れた声、その主を見上げた。
そうして、初めて目にする“世界”に、怖れや不安よりもずっと大きな、期待と喜びをあふれさせ、少女はうっとりと微笑む。
青年――生命神ハピは、満足そうにうなずいた。
「私の目となり、私の代わりに多くの喜びを、その目に映すがいい」
爽涼な中にくっきりと甘みを刻む香りが、部屋を満たしていた。
作品名:睡蓮の書 一、太陽の章 作家名:文目ゆうき