更新日時:2016-06-05 18:30:27
投稿日時:2016-03-01 06:44:38
空気のような存在
著者の作品紹介
おとなしい妻のカリナが怒った。
「なんで、姪を援助しなきゃいけないのよ」
夫のアツシが姪っ子のハナエの留学資金三百万を出すと言い出したのである。今のうちに援助しておけば、恩を感じて、いずれ養女の話をすれば、承諾してくれるのではないかと考えた末の判断である。妹に話はしてあったが、姪や妻とは話をしていない。
「いいか、俺が稼いだ金だ。どう使おうが勝手だろ」と平然と答える夫のアツシ。
なおも畳み掛けように「お前は専業主婦だ。悠々自適な生活しているだろ? 食わせてやっているのは俺だ。何の不満がある。不満があるなら、出ていけ。そもそも子供を作れなかったお前が悪い」
カリナは何も反論しなかった。子供以外のことを言われたなら反論しただろう。しかし、子供のことを言われたら逃げ場はない。もう二十年も前にかたがついている話だと思っていた。それをいまさら持ち出すとは。カリナの中で何かが弾けた。目にいっぱい溢れた涙を拭おうとせず、じっとアツシを見ていた。
「なんで、姪を援助しなきゃいけないのよ」
夫のアツシが姪っ子のハナエの留学資金三百万を出すと言い出したのである。今のうちに援助しておけば、恩を感じて、いずれ養女の話をすれば、承諾してくれるのではないかと考えた末の判断である。妹に話はしてあったが、姪や妻とは話をしていない。
「いいか、俺が稼いだ金だ。どう使おうが勝手だろ」と平然と答える夫のアツシ。
なおも畳み掛けように「お前は専業主婦だ。悠々自適な生活しているだろ? 食わせてやっているのは俺だ。何の不満がある。不満があるなら、出ていけ。そもそも子供を作れなかったお前が悪い」
カリナは何も反論しなかった。子供以外のことを言われたなら反論しただろう。しかし、子供のことを言われたら逃げ場はない。もう二十年も前にかたがついている話だと思っていた。それをいまさら持ち出すとは。カリナの中で何かが弾けた。目にいっぱい溢れた涙を拭おうとせず、じっとアツシを見ていた。