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てっしゅう
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「父親譲り」 第八話

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「あの子は自分と同じ運命を背負っていると感じられて他人だと思えないのよ。親子ほどの歳の差だけど、同じ女を感じるの」

「ふ~ん、よくわからんが女がどうのこうのは仕事には無縁だ。これからは二度とこういうことで電話をするな。解ったか?」

「武田さん、女をバカにしたらダメですよ。男に出来ること、女にしか出来ない事ってあるのよ。職場では男は男、女は女よ。違って当たり前。同じように罰するなら、同じような給与を払ってからにされたら?」

「偉そうに言うんだな。お前は誰のおかげでそこに居られると思っているんだ?おれが若い女と仲良くしているから嫉妬して言うのか?」

「あなたが誰と何しようが嫉妬なんてしませんよ。それに私のこと三年以上放置して、愛人だなんて思わないで下さい。気に入らなければ会社は辞めます。もっと素敵で若い人見つけて楽しませてもらいます。そのぐらいの覚悟で電話しました」

「なめられたもんだな・・・すぐに辞められると所長は困るだろうから、新しい経理担当がなれるまで給料は払うから残っておれ。それと、もう二度と電話するな。指示は所長を通してする」

「ありがとうございます」

最後の言葉はきつい嫌味に武田には聞こえた。
美津子は沙代子が自分のためにオーナーに電話してくれたことを所長から聞かされた。
そして前回の罰則は取り消すとも言われた。
改めて沙代子とオーナーの関係を強いものだと感じていた。

そんな中、八月に沙代子が会社を辞めると言い出した。武田オーナーから言われた次の経理担当が慣れるまでと言う頼みを無視して、ボーナスを貰ったらここを去ると決心したのだ。
支店は混乱した。銀行関係とかいろんな経理事務をする人が居なくなるという事は業務が止まってしまう可能性が生じる。所長の必死の引き止めも効果なく、オーナーの指示で辞職願は受理された。

送別会をやろうと計画され、七月最後の土曜日の夜、営業所全社員が揃って駅前の居酒屋に集まった。
所長のお疲れ様でした、と言う挨拶から始まって当面経理を美津子に任せたいとの訓示があった。急な配置換えで戸惑う自分が居たが、沙代子には部外者になってもしばらくは教えることがあれば来社するから安心してと言って貰えた。それはオーナーも承諾している。

いつもより酔いが回り、口が軽くなっていた沙代子は美津子に誘いをかけた。