返信不要。
半年前、彼は、高校生三年生になりたくないと言った。
学校を辞めて働きたいと言った。
私は、悲しかった。
恋人同士としても、同じ学校に通う同級生としても悲しかった。
先生や友達や母親の反対を押し切り、彼は居酒屋の店員として働くことを決めた。
私は、何も言えなかった。
彼なりの母親への愛情表現なのだと、十分にわかっていたから。
そして面と向かって母親に甘えられない分、私を強く抱いて苦しみを紛らわせていることも知っていた。
私は彼の名前を「トマ」とよんでいた。
本当の名前は、トモアキ。
何回も呼ぶ間に、そのほうが呼びやすくなったのだ。
そしてトマも、その呼び名を変だ、と言いながらも気に入っていた。
嬉しそうだった。
トマは、学校を辞め友達と遊ばなくなった。