返信不要。
トモアキに車で送られ、実家に帰った。
「それじゃあ…今までありがとう」
心にもない言葉をお互いに二、三言い合い
別れた。
終わった。
久しぶりに生還したような気持ちで
実家の玄関を開けると、そこは天国だった。
おじいちゃん、おばあちゃんがいる。
昨日も言われた
「おかえり、今日は外、あったかいねぇ
冷蔵庫にジュースがあるよ」
涙が出そうだった。
「暑いね、ありがと」
といって冷蔵庫をあけ、涙が悟られないように
かつ、昨日までの態度と変化があまりなく見えるように振る舞った。
ジュースを持って二階へ上がると、
お母さんがダイニングテーブルで
もやしのひげをとっていた。
私はお母さんの斜め向かいに座って、
「ただいま」とテレビに向かって言った。
お母さんは、私の横顔に「おかえり」
と言った。
私はもやしを一本手に取った。
ひげを取る作業は苦手だ。
だって、どこがベストな境目か分からないのだ。
ここだと思ってちぎっても
身が小さくなってしまったり
潰してしまったりする。
一本のもやしを持つ手が止まっていたようで、
「自分の加減でいいよ」
と、お母さんが笑った。