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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第六話

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「聞きましたわよ。確かに女性がした方が向いているという仕事はありますけど、女だからという意味合いでいうのはやめてくださいね」

「そんな意味で言ってないよ。厳しいなあ、いつも沙代子さんは」

「ならいいんですけど。それより美津子さんって独身なんだよね?」

「あっ、はい。バツイチですけど」

「ええ?そうなの。子供さんは居るの?」

「いません」

「なら、早く再婚して子供作らないとね。私みたいになるとみじめだよ」

「沙代子さんはご結婚されなかったんですか?」

「そうね、縁が無かったというか、あり過ぎたというか。機会があったら話すわ」

沙代子の話題は他の社員にとって触れにくいことのように感じられた。それは表情や会話を聞いていると解るのだ。
全て知っているという事だろう。

後日美津子は沙代子に誘われて食事をする機会があった。
入社してそれは一月ほど経った偶然にも離婚が成立して一年が過ぎた日だった。

「今日は誘ってごめんなさいね。話したいと思っていたの」

「ありがとうございます」

「あなたは私に似たようなところがあるように思えてならないの。特に理由を見つけた訳じゃないけど、匂いが感じられるの」

「匂い?ですか」

「そう、匂い。私は結婚してないけどそれには理由があるの」

「そうなんですか!」

「二十歳のころに付き合っていた男性と駆け落ちしてこの街に来た。最初は仲良く暮らせてたけど、彼は仕事がすぐ嫌になり辞めてしまうの。結局正式な結婚も出来ずにズルズルと時間が経って別れてしまったの。親にひどく叱られたわ。家にも戻れなかった私を救ってくれたのは今の彼・・・愛人ね、60歳超えている人だから」

「沙代子さん・・・彼ってどういうことですか?」

「うん、この会社を創業したオーナーがその人。名前だけ貸しているからここには来ないけど、株は全部持っているからオーナーなの」

「よく解りませんが、そのオーナーさんと沙代子さんが不倫をしていると?いう事なんですか?」

「不倫ね・・・そういう関係じゃないし、そうかも知れないっていう感じ。毎月お手当代わりに私を採用して給料という形でもらっている。条件は他の男性と付き合わない、もちろん結婚しないという事。もう二十年になるの。この年でもう結婚は叶わなくなった」

「辛くないのですか?」
素朴な疑問だった。