「父親譲り」 第六話
翌朝少し早めにエンジンをかけて自宅を出た。初日から渋滞だからといって遅刻はみっともない。
始業時間に30分早く着いた。従業員駐車場は空っぽだった。
一番奥に停めて待っていると面接をしてくれた営業所長が出勤してきた。
直ぐに車を降りて挨拶をした。
「おはようございます」
「早いなあ。良い心掛けだ」
全社員が出勤して定時から朝礼が始まった。
私の採用辞令が交付され、全員に紹介された。簡単な挨拶をしてそれぞれの持ち場へ別れて仕事が始まった。
まずは住宅の掃除をする。オープンは10時だからまだ一時間弱あるので、十分間に合う。平日は来客も少ないから気を使う事もないけど、土日は家族連れがたくさんやってくるので、お茶出しや、駐車場の案内、慣れてきたら住宅内の機器の説明もやらないといけない。勉強しなければならないことはたくさんあった。
仕事が18時に終了して、さっそく残っている社員で私の歓迎会をやろうとなった。
社員同士でよく飲みに行く駅前の居酒屋に連れて行かれた。
営業所長、現場監督、営業職の男性、経理事務員は女性、そして私の五人。
生ビールで乾杯して始まった。
「帰りはタクシーを使って帰れよ。飲酒運転はクビだからな」
営業所長は初めにそう言った。
「わかってますよ。さあ、飲んだ飲んだ」
一番の年配者である現場監督は聞いた年齢では父と同じだった。
所長は実家が有名商社の経営者一族でなぜここで仕事をしているんだろう、と思える身分だった。年齢は39歳、最近結婚した新婚さん。営業職の男性は去年入社の新人。年齢は25歳で岐阜県出身のスポーツマンタイプ。経理事務員は50歳の独身。彼女はここの会社オーナー(会長)の愛人だという事が後にわかる。
女性という事で経理事務員が最初に話しかけてきた。
「美津子さん、よろしくお願いしますね。この会社では女子は私とあなたとあと違う営業所に一人いるだけなの。きっと狙われるわよ」
「ええ?三人しか居ないんですか?」
「そうよ。営業の仕事が主だから女性は経理と店舗のお茶出しぐらいで良いっていう感じなのよ」
「それも大切な仕事だと思います」
この返事に所長は食いついた。
「そうだよ。女性として出来る仕事っていうもんがあるよ。ねえ、監督?」
「所長、私に振らないで沙代子さんに言われたらどうですか?」
沙代子とは50歳の経理事務員の名前だ。
始業時間に30分早く着いた。従業員駐車場は空っぽだった。
一番奥に停めて待っていると面接をしてくれた営業所長が出勤してきた。
直ぐに車を降りて挨拶をした。
「おはようございます」
「早いなあ。良い心掛けだ」
全社員が出勤して定時から朝礼が始まった。
私の採用辞令が交付され、全員に紹介された。簡単な挨拶をしてそれぞれの持ち場へ別れて仕事が始まった。
まずは住宅の掃除をする。オープンは10時だからまだ一時間弱あるので、十分間に合う。平日は来客も少ないから気を使う事もないけど、土日は家族連れがたくさんやってくるので、お茶出しや、駐車場の案内、慣れてきたら住宅内の機器の説明もやらないといけない。勉強しなければならないことはたくさんあった。
仕事が18時に終了して、さっそく残っている社員で私の歓迎会をやろうとなった。
社員同士でよく飲みに行く駅前の居酒屋に連れて行かれた。
営業所長、現場監督、営業職の男性、経理事務員は女性、そして私の五人。
生ビールで乾杯して始まった。
「帰りはタクシーを使って帰れよ。飲酒運転はクビだからな」
営業所長は初めにそう言った。
「わかってますよ。さあ、飲んだ飲んだ」
一番の年配者である現場監督は聞いた年齢では父と同じだった。
所長は実家が有名商社の経営者一族でなぜここで仕事をしているんだろう、と思える身分だった。年齢は39歳、最近結婚した新婚さん。営業職の男性は去年入社の新人。年齢は25歳で岐阜県出身のスポーツマンタイプ。経理事務員は50歳の独身。彼女はここの会社オーナー(会長)の愛人だという事が後にわかる。
女性という事で経理事務員が最初に話しかけてきた。
「美津子さん、よろしくお願いしますね。この会社では女子は私とあなたとあと違う営業所に一人いるだけなの。きっと狙われるわよ」
「ええ?三人しか居ないんですか?」
「そうよ。営業の仕事が主だから女性は経理と店舗のお茶出しぐらいで良いっていう感じなのよ」
「それも大切な仕事だと思います」
この返事に所長は食いついた。
「そうだよ。女性として出来る仕事っていうもんがあるよ。ねえ、監督?」
「所長、私に振らないで沙代子さんに言われたらどうですか?」
沙代子とは50歳の経理事務員の名前だ。
作品名:「父親譲り」 第六話 作家名:てっしゅう