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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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幕間30分(湊人の章)

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 巻きとったシールドをギターケースに放り込みながら呑気に笑う。それで本番に出れなくなっていたらどうするつもりだ、と言いたかったが、要が本番をキャンセルしたことは一度もないので、ぐっと飲みこむことにした。

「さあ、今夜はめいっぱい飲むぞー」

 酒弱いくせに、と言おうとすると、要はもう小雪の肩を持っていた。彼女は戸惑いながらも笑っているが、あわてふためいた信洋が要のあいだに割って入る。

 あの二人もうまくいくといいね――そう言った悠里の笑顔を思い出す。

 自分はまだ本気の恋を知らないけれど、いつかはジャズの歌に出てくるような身を燃やし尽くすような恋をするのだろうか、と燃え尽きたキャンドルを見つめながら考えた。

 神戸の夜にはきっと六甲山からの山おろしがふいているだろう。帰路につく悠里たちを包む風が、少しでもやわらかなものであればいい――木製の扉のむこうに続く近い未来に思いをはせながら、湊人はグランドピアノのふたを閉じた。

                              (おわり)