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からっ風と、繭の郷の子守唄 第71話~75話

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(DVのの証拠だ、間違いなく・・・)薄々と抱いていた疑念が、
貞園の中で確信へ変わる。
ドメスティック・バイオレンス(DV)は「パートナー等の親密な関係にある(あった)
カップルの間でふるわれる暴力」を指す。
美和子からも打ち明けられたことのある暴力の跡を、ついに貞園が
見つけ出した。

 『普段はそれなりに優しいの。おとなしい性格の人なの。
 でもお酒を飲んで酔ったときに、何かの拍子で暴力をふるいはじめる。
 本人は、次の日になると、打って変わって私を介抱してくれる。
 どちらも彼の本当の姿だと思う。
 長く一緒に暮らしてくると分かれるわけにもいかないし、
 それにあの人は・・・・』

 と美和子は、そこまではいつものように語る。
しかし、その先のことは語らない。いつものように言葉を打ち切ってしまう。
何かを隠している・・・
貞園もそのことに気が付いている。
しかし。その先の秘密へ、貞園は踏み込めない。
なにか途方もない秘密が、待ち構えているような気がするからだ。

 (50歩100歩で、私のところも似たような傾向がある。
 むやみに傷口を広げる必要はない。
 これ以上聞いても、お互いに、辛くなる話だもの)


 貞園にDVの体験はない。
内閣府の調査によれば、既婚女性の3人に1人がDV被害を受けている。
4人に1人の女性が、生命に危険を感じる暴力を受けている。
絶対的な力の支配で、女性の心と身体を傷つける。
それがDVの実態だ。
殴る。蹴る。引きずりまわす。物を投げつけるなどの身体的暴力にはじまり、
大声で怒鳴る。罵る。脅すなどの心理的な暴力に及ぶ。
性行為を強要したり、避妊に協力しないなどの性的暴力に発展する。

 生活費を渡さない。働きに行かせないなどの経済的暴力もある。
女性の行動の制限。友人に会わせないなどの社会的暴力も、
やはり、DVの範囲に入る。
何よりも辛いのは、身体に受けた傷やアザではなく、目に見えない
心に受けた傷が、被害者女性には一番つらい。
これらは長い時間をかけた、心のケアを必要とする。
心理的暴力もまた、身体的な暴力と同等であると考えられている。

 DVの背景には、性的な差別がある。
経済的、社会的に男性が優位に立っている社会。
女性が経済力を持つことに、困難が伴う社会。
子育てが女性の役割とみなされている。
家庭内の労働に対して、経済的価値が付与されていない社会。
妻には夫を世話し、支える役割があるとされている社会。
男性の攻撃性や暴力性が、男らしさの証とされているような社会。
このような社会意識(ジェンダー)のあり方が、
DVを許してきた根源と考えられている。

 ※ジェンダーとは・・・
 生物学的性差(セックス)ではなく、社会的・文化的・歴史的に
 作られた性差別のこと。
 いわゆる「男らしさ」「女らしさ」「男だったら・・・」
 「女のくせに・・・・」や、「妻は夫に服従するものだ」
 「家事や育児は女の仕事だ」という刷り込みなどを言う※


 予測不可能の突然の暴力は、いつ起こるかわからない。
日々を恐怖で過ごすことは、精神的、肉体的に大きなダメージを与える。
身体的、心理的暴力を度重なって受けた結果、被害女性たちは
「私がいたらないから」「私が悪いから暴力をふるわれる」と、
自分を責めていく傾向が強くなっていく・・・