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からっ風と、繭の郷の子守唄 第71話~75話

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 「こんにちは、康平。
 画像は、ちゃんと届いたかしら」

 「おう貞園。藪から棒の画像に驚いたぞ。
 一枚目は目つきの悪い、不良丸出しの坊主頭だ。
 もう一枚は女のようだが、画像が悪すぎてよくわからねぇ。
 ピントが合っていないうえに、手が震えているのかブレている。
 美和子の携帯を使って、へんてこりんな画像を2枚も転送してくるなんて、
 理由がまったくわからねぇ。どうなってんだ、今日のお前は」

 「美和ちゃんに、確認の電話なんか入れなかったでしょうね」

 「お前が、電話するなと命令したくせに。まったくもって失礼なやつだな。
 俺が、そんなに信用できないのか」

 
 「美和子ちゃんと聞くと、あんたは、舞い上がってしまうもの。
 最初の一枚は、美和子のご亭主の写真。
 2枚目は、美和ちゃんから携帯を借りるための、アリバイ写真。
 慌てていたからピンボケで失敗したといえば、辻褄は合うでしょう。
 肝心なのは一枚目の、亭主の横顔。
 実はわたし、この顔には見覚えがあるのよ」

 「この画像を転送するために、美和子の携帯を借りたわけか。
 なるほど、お前さんもかなりの知能犯だな。悪知恵にかけては。
 気が利かないと思っていたが、いざとなるとそれなりに
 機転がきくようだ」

 「失礼な。でも、ここからが肝心な話ですから。
 スナック『夜来香(いえらいしゃん)』の発砲事件は覚えているでしょ。
 その時の実行犯は、いまだに逮捕されていないの。
 人相も明らかにされていません。
 わたし以外は、誰も犯人を見ていないのだから、当たり前です。
 実ははっきり見たけど、怖くて、警察には見たと言っていません。
 言えるわけないでしょう。
 逆恨みを受けたら、私の命が危なくなってしまうもの。
 問題はこの男が、美和ちゃんの亭主ということよ。
 どうする康平?。
 まずは、こいつがいったい何者で、どういう男なのか、
 そのあたりから、確かめる必要があると思うの」

 「この画像を警察へ持って行き、こいつが実行犯だといえばそれで済むことだ。
 面倒くさいことに、俺たちが手を出す必要はない」

 「そうは行かないでしょ。この男は、美和子のご亭主なのよ。
 だからわたしが苦労しているの。
 生まれてくる子を、発砲事件の犯人の子にしたくないわよ・・・・」

 「発砲事件の犯人の子?」と聞き返す康平の言葉に、
「あっ!」と気づいた貞園が、あわてて自分の口元を両手でおおう。
勢いに乗っていたとはいえ、思わず自分の口から出た失言にようやく気が付く。

 「どうやら、俺に言えない秘密があるようだな。
 この写真の背後に、深い秘密と、しがらみが潜んでいそうだ。
 無理にすべてを話せとは言わない。
 だが公開できる範囲で、知っている情報を明らかにしてくれ。
 最初に聞きたいのは、なぜ今頃、こんな写真が出てきたんだ。
 まず、それから聞きたい」


 「お願い、もう少し待って。
 こんがらかった頭の中を整理するから、少し時間をちょうだい。
 美和ちゃんにだって、メンツがあるもの。
 女にしか分からない、微妙な問題もからんでいるの・・・・
 だから康平。わたしに一杯頂戴!。
 気持ちを鎮めてから、ひとつづつ、話をしますから」

 「わかった。美和子の亭主の件は、後回しにしょう。
 もう一枚の、この青い服のピンボケ写真は一体なんだ?。
 これには、それほど込み入った複雑な事情は潜んでいないだろう。
 誰なんだ、この女は・・・」