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からっ風と、繭の郷の子守唄 第71話~75話

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 「康平。喜ばせてごめん。
 美和ちゃんの携帯からかけているけど、あたしよ、貞園。
 大切な画像をこれから送るから、黙って受け取ってちょうだい。
 理由は後で話します。
 この件に関しては、美和子ちゃんに確認の電話をかけないでね。
 内緒で工作していることが、電話をいれたら美和子にバレちゃうの。
 要件はそれだけです。じゃ、切りますから」

 通話を切った貞園が、携帯の中から先ほどの画像を探し出す。
横顔が写った画像はすぐに見つかる。
リダイヤル機能を使い、康平のもとへ画像を転送する。
(ふふふ、ついでにもう一枚。これも)と、今撮ったばかりの女を
選択をすると、ついでに、それも転送してしまう。

 (OKです。準備はこれで完了です。我ながら完璧といえる仕事です)
席へ戻った貞園が、、覚めてしまったコーヒーを口へ運ぶ。
美和子がトイレから戻ってくる頃には、すっかりと落ち着きを取り戻したている。
両手を顎の下へ組んだ貞園が、静かに、美和子の着席を待ち構えている。

 「変ねぇ。嬉しそうな目であたしを見つめたりして。
 まだ何かあるのかしら?」

 「いいえ、もう、何もありません。
 妊娠して、母親になることの実感がどんなものなのか、
 それを美和子から聞こうと思って、こうして待ち構えているの。
 ねぇ教えて。母親になるって、どんな感じなの?」

 「お医者さんから、妊娠です。おめでとうございますと告げられるだけです。
 まだ半信半疑です。それほどの実感もありません。
 つわりがあるわけでもないし、これからいろいろ体験するだけです。
 まだ実感もありません。
 『あら、やっぱり妊娠してたの、へぇぇ、そうなんだぁ~』
 くらいなものかしら」

 「説得力がありませんねぇ・・・・そんなことで、いいのかしら。
 まったく頼りのない、母親で」
 
 「お腹の赤ちゃんの成長とともに、母親も成長するそうです。
 一緒になってから、6年も経ってからの妊娠です。
 喜びより、驚きの方が大きいの。
 お腹の中に赤ちゃんがいるかと思うと、不思議な気がするの。
 嬉しさもあるけど、不安も次々と生まれてくるわ。
 妊娠が、良い方向のきっかけになってくれれば、最高なんだけどね。
 なかなか現実的には、うまくいきません・・・・
 世の中は、難しいことばかりが横たわっていますから」

 「それって、」と言いかけた庭園が、言葉を呑み込む。
矛先(ほこさき)を変えた貞園が、美和子のお腹へあらためて嬉しそうな
視線を投げかける。

 「羨ましいわ、女として。
 お腹が大きいお母さん達を見ると、嫉妬している自分が居るの。
 そんな自分をはしたないとは思うけど、やっぱり、そんな風に感じてしまう。
 わたしも、ずいぶん因果に生きています。
 好きで選んだ自分の生き方だもの。愚痴ばかり言うのは愚かです。
 でもやっぱり、子どもを産めないのは、辛いわ。
 いい子を産んでちょうだいね。6年目の新米の、お母さん!」

 (そうよね。子供を授かるということが、たぶん女の一番の幸せだ。
 DVといい、ヤクザのご亭主の存在といい、問題は山のように待ち受けている。
 ここからが思案のし所だ。
 私にも、手に余る難題ばかりが待ち受けているけど、それは美和子も同じ。
 これから先の対策を、どうしょうかしら。
 さて。おせっかい焼きで、お友達想いの貞園ちゃんとしては・・・・)