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からっ風と、繭の郷の子守唄（71)
｢天神通りのアーケードの下、気になる出会いの千尋と庭園」

　貞園がにこやかに、昼を過ぎたばかりの天神通りアーケードを歩いている。
上機嫌なのには、ちょっとした理由がある。
交際相手に、離婚の兆しが見えてきたからだ。
空調設備会社の社長で遊び人として有名な林光太郎氏の離婚調停が、
最終段階へ入った。

　貞園の愛人生活もすでに10年。
やはり心のどこかで、淡い期待を抱いていた。
険悪化が深まった光太郎氏の夫婦仲は、決定的な段階を迎えている。
別居がはじまり、そうした暮らしが定着したまま、丸1年が経過している。
弁護士による話し合いも、最終の局面を迎えている。
離婚はすでに、確定的なもの、誰が見てもそんな風に見える。