僕の好きな彼女
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「ご快復されて何よりです。一時は失血状態から意識不明になっていましたので、正直このまま回復は見込めないのではないかと思っていました」
若くて彫りの深い俳優のナントカさんに似た先生は、あっさりとそんなことを言ってのけた。
はあ、とだから私は生返事を返した。
おなかがその弾みでじぐんと痛んだ。
お母さんは、私のベッドの隣で椅子に腰掛けて涙ぐんでいる。
「本当に良かった」
と何度も何度も呟いている。
お父さんはそんなお母さんの肩に手をかけて、ずっと優しくさすり続けていた。
私は何だかそれで気恥ずかしくなったけど、お母さんやお父さんを決定的に悲しませなかったのだと思うと、少しだけ安堵するものを感じた。
先生の説明が終わったあとで、私は病室の中でお母さんと話をした。
私を刺した通り魔はあのあとすぐに捕まったと言うことと、逮捕のきっかけは自首であったと聞いた。
自首に至った経緯は精神錯乱だとか、悔悟の念に打たれたとか、噂はいろいろみたいだけれど実際のところは『捜査中の事柄』とかでよく分からなかった。