僕の好きな彼女
怪物は、実に怪物だった。
冷酷にも、彼女の知り得た『死後の世界観』は真実であったようだ。
怪物は声を発しなかった。
ただ、口の端を軽く歪めた。
笑顔ではないが、それは奇妙な充実感を持った感情の発露に見えた。
そしてそれは「はい」とか「おう」とか言うコトバなんかよりも遙かに雄弁に、こいつが真実『それをした人間であること』を肯定しているように感じられた。
脳天から足下まで冷や水が駆け抜けるような恐怖感が僕を襲った。
でも、同時に透き通るような勇気が僕の中に芯を作った。
その芯がどこから生まれてきたのだろうと思った次の瞬間、僕の目は彼女の方に向いていた。