僕の好きな彼女
『怒り』や『悲しみ』、それに『自分にとって後々都合の良いこと』。
そうした事柄は確かに確実に人間を創りあげる。
悲しいが人間は我田引水が基本の生き物だ。
だがしかし巡って引いたその水は、弾みで誰かの田に流れ込むことがあったり、いつか結んだ畑の実は、自分ではない誰かの腹を満たすことだってきっときっとあるのだ。
彼女の中の『闇』は『愛』に裏打ちされている。
真っ直ぐな愛に裏打ちされた彼女の中の闇は、どこまでも昏いのに、僕にはとても眩しくて。
彼女がはっきり美しく見えたのは、きっとその瞬間が最初だ。
彼女が求める言葉の本質が彼女自身の恨みの解消ではなく、彼女が好きだった誰かを悲しませたことへの呪いだとするのならば、その呪いというのは、なんと美しいものであるのだろう。