僕の好きな彼女
5
彼女と出会ったときと同じようなオレンジ色の夕暮れの中を歩く。
駅前の通りには風の寒さに背を丸めた人たちが足早に行き交っている。
その人々の間に、ふと開けた視界の先で、彼女が立っていた。
肩幅に足を開いて、両腕を身体の前で組んでいた。
そこで彼女は僕を、『僕だけを待っている』と言った様子で立ち尽くしていた。
その目は出会ったときとおんなじ、真っ直ぐな見えないラインを描いて、間違いなく僕こそを見ていた。
なんだろう、どきんと胸の中が跳ねるのを感じた。
そのまま僕は彼女の元へと歩いた。
彼女は僕の行く先で立ち尽くしたままだ。
あと二歩で伸ばした手が触れることが出来る距離まで近き、僕は彼女に軽く会釈した。
「来てくれて、ありがとう」
と、彼女はまるで、友達が誕生日パーティーに来てくれた子供のような素直な声でそう言った。
「まあね」
と僕は応えた。
そして不意に、彼女の視線から顔を背けた。
なんと言えば良いのか、あんまり真っ直ぐなその視線にくすぐったいような何かを感じたからだ。
でも、