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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「父親譲り」 第二話

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それは許されることではなかった。結婚話は少し中座していた。
伸治の就職は決まっていたが、彼はストレスで半年ほどしてその会社を辞めた。
その時のことが尾を引きなかなか就職しても続かない日々が続いていた。
生活をお互いに補うために一緒に暮らし始めた。

それは結婚生活のような楽しい日々だと自分は嬉しかった。彼がそのうち就職出来たら両親も許すだろうし、子供が出来たら初孫になるので遊びにも来てくれるだろう。そんな夢を見ての毎日だった。

転機が来たのは彼が営業職に就職した年だった。
毎日外回りをして厳しいノルマ達成のために歩き回っていたが、成績が思わしくなく上司から厳しい言葉を浴びせられノイローゼに罹り自宅に閉じこもってしまったのだ。
会社からの毎日の催促も病気を偽り、休むと答えていた伸治はついに退職すると伝えていた。

気持ちはわかるが男としてきちんと始末をつけて欲しかった私はそのことを話した。
それに反感を覚えた彼はこう言い捨てた。

「おまえは良いよな。専業主婦希望で」

「私も仕事しているのよ。そんな言い方は止めて」

「ふん、いい気なもんだ。おれの苦労なんて当然と思っているんだろう」

「伸治くんは変わった・・・あんなにやさしかったのに」

「優しかった?おれがか?ハハハ~今の姿が本当の自分だよ。悪かったな。気に入らないなら出て行け」

その言葉を聞いて信じられなかった。これまでの何もかもが崩れ去ろうとしていた。
私が何か言うと彼は暴力を振るうようになっていた。それでもここは我慢と仕事先を変え今よりお金を稼ぐようにしていた。彼も少しは考え直したのかアルバイトをしながら家計は何とかやりくり出来ていた。少し以前の優しさが戻っていたように感じていた。

ボーナスを貯金して余裕が出来たとき正式に結婚したいと彼に言った。彼は嬉しかったのかこれからは辛くても頑張ると言ってくれた。その言葉を信じたかった。
入籍だけを済ませて私たちは正式な夫婦となった。
両親には伝えたがもちろん猛反対。

しかし、時は流れて決定的な別れが来るようになってしまった。
人は頑張って成功するとその記憶が次の苦難に立ち向かう勇気となる。逆に挫折すると喜びすら疑い深く感じてしまうのだろうか。