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幕間10分(悠里の章)

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「お待たせ~」
 スタジオの入り口前で笑いあっていると、階段の方から噂していた人がやって来た。ベースの晴乃と、同じくデートと称して遅れてきたドラムのサラだ。

「どっちが、その人?」
「あっち、です」
 悠里は首でベースを持った背の高い方を示した。さっきの話を聞いて互いに笑いを圧し殺した。
「ま、良かったらライブ、来てよ。おかげで頑張れそうだから」
「はいっ!」
 悠里は元気よく返事をすると、信洋は時間になったようで荷物をまとめ、晴乃たちに会釈をして帰っていった。通路の両端で向き合う悠里と二人、お互いに言葉を探して間が空いた。

   * * * * *  

「しかしルノはいいとして、なんでサラまでデートなん?」
時間を見れば予定の時間は少し過ぎている。悠里自身も話が弾んであまり気になってなかった。
「それはぁ、あたし的作戦があって……」
「作戦って、何?」
 晴乃には自分をふった彼氏がいることを知っているが、サラの方は全然うまくいってない彼氏がいて、そして彼女自身違う人が好きなのを知っている。それでもデートだというのに、自分への冗談とばかり思っていた。
「悠里ぃ……」
「何、ルノ。え?なになに?」
 悠里は長身の晴乃に頭をつかまれサラに背を向けて耳打ちで囁かれた。
「えーっ!あたしに紹介したい人を探すため、ってぇ?」
悠里の大声が廊下に響く。
「エエよ、そんなん」
「もしかして間に合ってる?」
「さっきの人にナンパされた?」
「ちーがーいますっ!さっきの人はお兄ちゃんを知っとう人で、あたしを見て……」
「妹と分かったワケね?」
「キミら、兄妹爆似やから」
3人でここにいない兄の顔を思い浮かべて笑いあった。兄妹が似ているのは共通認識である。
「なあなあ、それより今度ライブ見に行かへん?さっきのドラマーの人がチケットくれてん」
 悠里はそう言ってさっき堤にもらったチケットを見せると、サラがそれを取り上げて書かれてある内容を確認した。
「ブラックバード?チケットが何かゴージャスよ」
「あたしら高校生でも行けるんかなぁ。大人の匂いがするよ」
「ちゅーことは同伴者付き?」
「やっぱりナンパされたんやんか?」
「だからちゃうって言うとうやんかぁ!」

 さっきまで静かだった貸しスタジオ「QUASAR」、音楽ではなく女子3人の漫才で一気に騒がしくなった。彼女たちは雑談が練習時間を減らしていることは気づいていない、というよりそれも別に構わないとさえ思っていた――。


『幕間10分』 おわり(続きがあるかも?)
作品名:幕間10分(悠里の章) 作家名:八馬八朔