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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「化身」 第八話

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作治は昌春の後をついて山の中の獣道を進んで話していた民家の前に着いた。
夕餉の支度をしていたのであろう。炊事場の方から煙が上がっていた。

「昌春だ。戻ったぞ」

「お帰りなさいませ・・・作治殿ではありませぬか!」

「おう!菊か。生きておったのか、嬉しいぞ」

駆け寄り作治は菊の身体に触れ、本物か確かめていた。

「作治殿、そのようなことをなさらなくても菊は生きております。中へお入り下され」

「ああ、そうさせてもらおう」

菊は連れ去られてからのことを作治に話した。それは昌春が少し話したことと同じ内容だった。付け加えたのはいつか作治と再会できる日が来ると信じていたという事であった。

「昌春どの、それでは菊に先ほど約束されたことを話され、暗くならないうちに神社へ参ろうか」

「解った。時間をくれ」

昌春はそう言うと奥に入り服を着替えると作治に伝えた。菊はその着替えを持って後に続いた。作治の元へ戻ってきたのは直ぐであった。したがって二人の間には別れを惜しむと言った様子は見取れなかった。

「菊、私は作治殿と約束をした。そなたも一緒について来てすべてを見届けて欲しい。これですべてから解放される。どのようにするかは自分で決められよ」

「昌春殿。作治殿とのお約束とは何でござりますか?」

「うむ、おれの魂を永久に白鬚神社に封じ込めるという事だ」

「白鬚神社に封じ込める?殺して埋めるという事ですか?」

「いや、焼き尽くすのだ。魂だけを謂われある札に閉じ込めて封印するという事だ」

「永久に封じ込めると言われるのですか?」

「そうだ。それが楽になる唯一の方法なのだ」

「ご自分で選ばれたのですね。菊は作治殿と村へ帰ります。お許しください」

「許すも許さぬもおれの身勝手だったから謝るのはおれの方だ。すまなかった」

そのやり取りを聞いていた作治は二人の関係を話の内容通りに信じ切っていた。
薄暗く闇が迫る気配の獣道を歩いてゆく三人の姿はこれから起こる悲劇の序章に過ぎなかった。
作品名:「化身」 第八話 作家名:てっしゅう