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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「化身」 第八話

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「作治殿、頼み事とはこの身を白鬚神社に封じ込めて欲しいという事だ」

「なんと!自ら死ぬというのか?」

「いや、おれは完全には死ねない。たとえ八つ裂きにされても魂は永遠だ。この身を消してもいつしか自分の魂が人の姿を借りて甦る。その連鎖を封じ込めるために神社の祠に閉じ込め祈りを捧げて焼き殺してほしい。
そうすれば特別の計らい事をしない限り甦ることは無い。おれを・・・楽にさせて欲しいのだ」

「人は生きながらえることを強く望む。お前が死にたいと願う事は解らぬでもないがこの期に及んでそれを言い出すことが解せぬ」

「俺は観念したのだ。作治殿の強い執念に感服した。菊は間違いなくそなたの元に帰るだろう。手籠めにするなど決してない。私を救ってくれたのだからな」

「菊がお前を救ったと?その訳は何だ」

「俺が百年にもわたって同じことを繰り返していることを嘆き悲しんでくれた。その涙を見ていかに鬼の姿をしていようとも食べるなどという事が出来なかったのだ」

「信じよう」

「すまぬ。菊と話しているうちに一つの考えが浮かんだ。それは自分がこの姿になった白鬚神社に伝わる悪霊・怨念を封じ込める教えを誰かに奉じて貰えれば、永久に楽になれるという事だったのだ」

「主様に頼めば済むことだったのではないか?」

「私の頼み事を信じるというのか?仮にも火を点けて殺してしまうことを受け入れるとは思えない」

「主様は心の広い方だから、その申し出に悩まれるかも知れぬな。たとえこの作治が頼んでも同じことになると思われるがその時はどうする?」

「作治殿が慣例に従って行えばよい」

「おれが?神主ではないぞ」

「そのようなことは関係ない。神社にある札を私に貼って燃やせば済む」

「それはまことか?では神社でなくとも良いのではないか?」

「その札は燃えずに燃え尽きたこの身と魂が中に閉じ込められる。その札を元の場所に戻して外に出ないようにすれば、もう二度と現れることは無い。封印は間髪を入れずに直ちに行わなければならぬのだ」

「菊の場所に連れて行け。菊も同伴させてお前の最後を見届けさせよう。それがお前を信じる唯一の方法だ」

「ではそうしよう。旅立ちの準備をさせてくれ」

「ここからどれほどかかるのだ?」

「一刻半もかからないところだ。今から行けば日が暮れる前に戻って来れる」
作品名:「化身」 第八話 作家名:てっしゅう