今際のコールセンター
「妻に……別れた妻に最後の言葉を残したいです。
今まで……迷惑かけて悪かったなぁ。
養育費を払えなかったのも、実は自分の体を壊して……」
電話をかけ終わると、眠るように静かに息を引き取った。
それを見た若い男が半狂乱になった。
「うあああ! うそだ! うそだ!
俺も死ぬのか!? 伝染したから俺も死ぬのか!?
嫌だ! 死にたくない! 死にたくねぇ!」
そのまま電話をかける。
「ちくしょおおお! 死にたくねぇよぉぉぉ!!
なんで俺がっ……童貞のまま死ぬのかよぉぉ!!」
待って。
俺はこの今際の言葉を聞いたことがある。
「この病室に移されたのもきっとそうだったんだ!
俺は隔離されていたんだ! ちくしょう!!
ここにいる奴らはみんな死ぬんだ!」
次に、病室にいるおばあちゃんがそっと電話をかけた。
「天国のじいさんにメッセージを残したいです……。
おじいさん、聞いていますか?
わたしももうすぐそちらに参りますよ……」
俺が聞いていた今際の言葉のすべては
――未来からの言葉だったんだ。
「お兄ちゃん、どうしたの? 顔色すごく悪いよ?」
俺は迷わずに全財産を妹の治療にあてた。
世界的な名医も雇って治療へ専念させた。
そしてついに、妹の命を救うことができた。
その後、病室に入ったことで感染した俺は死んだ。
作品名:今際のコールセンター 作家名:かなりえずき