小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
☆自転車☆
☆自転車☆
novelistID. 58243
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

志旬季。

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
<仲谷研吾の場合>

”あームカムカする。”
この時の俺はいつものように部屋に閉じこもり、一人でパソコンに向かっていた。
「研吾ー。ごはんよー」
気軽くていいな、と怒りながら思う俺にかあさんはいつものようにのんびりと1階から話しかけて来る。
「うるせぇ!」
よく、青春ドラマなんかであるパターンだな、と俺は思ったが直ぐに切り替えてパソコンへと目を戻す。俺は焦っている。この前の期末テストでは少し手を抜いてしまった、というか遊びまくってしまったため大学への推薦がもらえないかも知れないのだ。俺は近所の高校へと入学したものの成績は良くない。学校では成績の話は思った程出なかったが、家族となるとどうも誤摩化す事が出来ないのだ。やはり、これも決まったパターンなのかあいにくテスト返しの日によって、帰りがとうさんと一緒になってしまった。さらにかあさんがおしゃべりな為か、とうさんにまで伝わっていて、とうさんはどうしてもその話に持って行こうとする。だが負けたもんじゃない。家の鍵を開けるなり、俺は二階へと閉じこもった。これもよくあるパターンだ。長々と話してしまったが、本題に入るとしよう。
 俺はいつものように息抜きとしてパソコンを立ち上げてみんなのリアルタイムを覗いていた。俺のフォロワーは他の奴らよりも断然多いだろう。(現実の友達は少ないのだが)リアルタイムにはみんなの行動がすぐに読み取れる。名前は”ダイヤモンド”で登録している。本名で登録する人が多いが、家族に発見されて面倒になるのは嫌だ。だから、ゲームのキャラクター、ダイヤモンドをニックネームにしている。ちなみにこのキャラはゲーム内では最も強いのだ。5分程見ていると、気になる投稿を見つけた。URLだけ貼付けられた投稿だった。誰が投稿してたかは覚えていない。気になったのも、興味があったのもあったので、ワンクリックする。変なサイトだと自然にロックが掛かるのでうちのパソコンは安心出来る。新規ウィンドウが開き、すぐさま見覚えのあるブログサイトへととんだ。誰かのブログなのだろうか。見てみると、予想は的中だった。なーんだと思いながら、少し覗いてみる事にした。ブログの題名は
”志旬季”
少し目を通すだけだったつもりだったのだが、見てると共感出来る部分がいくつかあった。

「8月5日/16:30 ○○ゲーム、攻略しました!…なんか前シリーズは達成感あったけど面白かったはずなのになーんかつまんないなぁ。」

「8月22日/13:23 今日は晴れ。晴れは嬉しいはずなのに、雨の方が私の気持ちに似合う感じがする。」

プロフィールを見ると同い年の女子、が書いていると言う事が分かった。女子ってコミュニケーション取りにくいんだよなーなんて思いながら共感出来る所があった。話しかけるだけと思って、コメントを送った。

「10月18日/17:02 件名:初めまして☆ 返信先:ダイヤモンド
初めまして、ダイヤモンドと言います。共感出来る部分があって、とても素敵なブログだと思います。」

短い文となったが、長いと怪しまれるんじゃないかと言う俺の未熟な判断から、躊躇いながらも送ってみる。送信完了の文字を確認すると、テレビが番組のオープニングと共に17:30を教えた。若手芸人が出て来て、ネタを披露する。その後は大喜利が始まり、お客さんを巻き込んで笑いが起きる。そんなテレビを見ながらかあさんが持って来た夜食を食べた。今日の夜食はシチューだ。廊下に置いてあった為か、冷たくなっていたが、かあさんの作る飯はいつも上手いなぁと痛感した。
シチューを平らげると、久しぶりにリビングを通り台所へと食器を下げる。いつもは廊下を通って学校に行くので2週間ぐらい、リビングにも家族にも関わる事は無かった。というかこちらから無視する事が多くなった。食器を久しぶりに洗う。
「あら、珍しいわね。」
かあさんはいつも呑気な感じで言う。俺はいつものように無視した。俺の家族は4人家族。母・父・俺・弟の4人だ。仲が良い訳でも悪い訳でも無い。皿を洗い終わると何も言わず自分の部屋へと向かった。2階へ向かう前にちらりと横を見ると父はいつものように本を読んでいて、弟は受験勉強。母は明日のママ会に向けて準備をしていた。一言もしゃべらず上に向かう。自分の部屋は一番落ち着く。ベッドに横たわると、俺はしばらくボーッとしていた。最近、こういう事が増えている。小学生の時までは、思った事を全て言うようにしていたが中学となると溜める物が多くなった上にぼーっとする事が多くなった。とその時、ピロロロンとパソコンがメールの通知を告げた。すぐさま、確認してみるとやはりあのブログの女の子からだった。

「10月18日/18:08 宛先:ダイヤモンド 返信先:メルン
初めまして♪コメ、ありがとうございます!共感してくれる人が居るなんて…嬉しいです。
是非、仲良くして下さいね。^_^」

ここで初めて相手の名前が分かった。メルンと言う女の子らしい名前だ。だが、まだ信用は出来なかった。誰かが成り済ましているなんて、ネットのあるあるである。それでも俺は直コメを貰った事にとても嬉しかった。直コメなんて100人に一人しかしてこない。メルンのブログを再び見てみると、今日のブログが更新されていた。題名は「ファンが増えました♪」だった。もしやと思った俺はその確率に少し期待しながら一番上に来ている、ブログを閲覧した。

「10月18日/17:42 今日はファンが増えました♪ダイヤモンドさんです!毎日のんびり下らないブログに始めて共感してくれました。嬉しいなぁー♪」

早速、絡んできた”メルン”と言う人物は思ったよりもお互いに気が合う事で、俺はまだ半信半疑になりながらもメルンとの交流を続けた。このメルンと言う人物は案外、心を開きやすい奴で家族や友達の事、秘密にしている事まですんなりと話せた。(勿論、直コメだが)俺の唯一の息抜きだった。それから、受験も近づき学校も騒がしくなった。他の奴は休みが多くなったり夜まで勉強していると言う事だった。俺は幼い時から家族に生活のリズムを厳しく取り締まられているせいか、学校を休みたくても行かなきゃと言う思いの方が多かった。学校に行ってもほぼ、一人だ。本を読んだり、勉強したり少しガリ勉を気取っていたのかも知れない。小学校の時は運動三昧で将来の夢はスポーツ選手と決まっていた俺だったが、いざスポーツ一本でやるとなるとどのスポーツが将来になるのかなんとも言えない状況だった。未だに将来の夢は決まっていなかった。そんな時だった。
メルンはこの悩みにも乗ってくれた。どんな悩みでも必ず返信してくれるのが彼女のいい所だ。

「12月1日/17:32 宛先:メルン 返信先:ダイヤモンド

どうしよう、将来の夢が決まらないよ。メルンは何になりたいのかな。俺に似合う仕事って無いのかなぁ」

普通の受験生だったら、「お前の事なんて知らねぇよ!」とでも言いそうだが、メルンは違った。

「12月1日/17:59 宛先:ダイヤモンド 返信先:メルン

私も決まってないよー。でも、ダイヤモンドは文章構成が上手だから、作家にでもなれば?1回自分の好きなように物語を作ってみなよ」
作品名:志旬季。 作家名:☆自転車☆