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「それはよく聞くね。親や周りから反対されて従っても結婚生活が幸せになれるのかと言うと違う。もちろん駆け落ちして一緒になったとしても苦労させられて破たんすることだって多いよ。里紗さんにとってここで働くための運命だったと考えるのが救われるね」

「亨さん、そう考えているのよ。そして亨さんとこうしてお仕事を一緒にするのも運命だったの？」

「うん？ボクと一緒に働くことが、かい？」

「ええ、こんなことしているところに来るだなんて、考えられなかったし、こうして話せる機会も無かったかもしれないしね」

「前向きにとらえるとそう言うことになるかも知れないけど、ボクじゃなくても男性が仕事すればこういうことが起こる可能性はあったと思うけどね」

「ううん、ない。亨さんだからあったの・・・」

里紗は身体の芯に残っている満たされないままの状態が目の前にいる亨を誘うような言葉遣いに現れていた。
亨はもちろんそれに気付いている。

「里紗さん、それはボクのことを評価しすぎだよ。運命なんてそうそうやってくるものじゃない。今のキミは普通じゃないからそう感じてしまうんだよ。明日になれば、そんなこと言いました？ってなるよ」

「いじわる・・・」

亨は帰ると言って休憩室から出て行った。
里紗は女心の解らない人だ、と思ったがそうじゃなく本当に優しい人なんだと考え直した。
普通の男ならあんなことをしているのを見たら、飛びかかって来ただろう。

自分がどうして時々慰めないといられないのか考える時間になっていた。
恋人が居て慰められればこんなことはしないのだろうか。そういう事とは別に密かな楽しみとしているのだろうか。

別れた夫とはセックスで満足させられることは無かった。それが自分のこんな楽しみをするきっかけとなっていた。ここで仕事をする前にニ、三人と深い関係での付き合いはしてきたが、共に満たされることは少なかった。

早奈枝や志津の経験を聞かされると、自分が女としてまだまだ未熟だと思わされる。
もっと男性と経験しなければとの思いはしかし、心の面で自分が求めているような優しさや気遣いのない男性とは出来ない、したくないとの抵抗もあった。

今夜亨との会話で年齢は上だけど自分が求めているような優しさと気遣いが出来て、それでいてきっとあちらは最高の男性だと思えるようになり、眠れない高ぶりが、再びしまった道具を取り出して慰める結果となっていた。

里紗は翌朝熟睡できなかった顔で亨に挨拶をすると、ニコッと笑って、「お疲れ様です」と言われ、恥ずかしい思いを覗かれたようでうつむいてしまった。