お蔵出し短編集
17
親切なあなたへ。
くたばってしまえ。
正確無比というのは悪だ。
適当なくらいがちょうど良い。
知りたくもない数字、知りたくもない未来。
やって来る破滅の足音。
飛翔体の飛行時間と、墜落に向けて奏でられる風を切る絶望の調べ。
政府は発表することにした。
テレビの四角い枠の中で、
『絶望を共有することは、政治家として最後の良心だ』と告げていた、
あなたのその顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。
でも、
そんなことよりも。
私は掴んだ電波時計を見る。
正確無比に告げられたその時が迫ってくる。
だから、私は思考をトップギアの全速力で吹っ飛ばす。
ロケットよりも早く、宇宙の果てを目指すなら、せめて空想の中でだけでも。
デジタルの表示が進む。
その進みが均質なのは、今の私の心が均質だからだ。
これをどこまでも引き延ばしてやる。
心を延伸して、1秒の中にあらゆる私を詰め込んで、私は永遠を生きるべく、ベッドの中で、毛布を頭までひっかぶって努力する。
17歳の私の、最後の17秒が始まる。
よーい、ドン、だ。