お蔵出し短編集
オレはふとそんなことを言う。
その子は首を横に振った。
「おじさんお酒飲んでるし、アルコールって飲んだら血に溶け込むんだよ?知ってた?」
「そんなの当たり前だろ」
オレは憮然とした振りをして答える。
「だから、おじさんの血を飲んだらボクはお酒を飲んだことになっちゃう。お酒は二十歳になってから」
「今死ぬなら、おまえに二十歳は永遠に来ないじゃないか。それなら今でも問題ないだろう?」
「ふふ、本当はね、アルコールの溶けた血を吸血鬼は飲むことが出来ないんだ。これ、内緒だよ?」
その子はいたずらっぽく微笑んで、自分の唇の前に人差し指を立てて見せた。
「おまえさ、吸血鬼の秘密をオレにべらべらしゃべって良かったの?妻や夫だって秘密を守るためには殺されることもあるんだろ?」
あ、とその子が驚いた顔をする。
しかし、次の瞬間には困ったような笑顔になる。
「おじさんになら、いいや。ボクももうすぐ死んじゃうし、おじさんが黙っていてくれれば、結局秘密は守られる。ボクが話したってことも、ボクがいなくなったら、誰にもバレないし分からないしね」
「そんな適当で良いのか?」
「いいんだよ、ボクが良いと思うんだから。それに、ボク」
ふとその子が言葉を切り、