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てっしゅう
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新連載!「化身」 第一話

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徳川家康が江戸に幕府を開いておおよそ100年余りが過ぎていた宝永六年の年の瀬、信州の山深い山村で村民全員が集まって、村長を囲んで話し合っていた。

「また今年も暮れが迫ってきよった。もうこれ以上の犠牲者をたくさん出すことはいけねえ。納得できないだろうけど、今年からみんなで選んだ一人をいけにえに捧げることにしてはどうだろう?」

村長の絞り出すような声は集まっていた30人ほどの大人たちのざわめきとなった。

村では毎年、年の暮れになるとどこからか妖怪がやって来て村の娘を連れ去ってゆくことが続いていた。連れ去られようとする娘を助けるために手助けしたものはすべて妖力で殺されていた。一人の娘のために数人の大切な命が奪われる。それは親だけではなく兄弟や隣近所の村人にも及んでいた。

「みんなどうだ?意見があるものは言ってくれ。どんなことでもいいぞ」

隣同士小声でざわついている中で一人の若者が手を上げて口を開いた。

「村長どの、こうしてはいかがかと思いつきました」

「おお、作治か!どんなことを思いついたのだ?」

「むごい話だけど、妖怪のやつは連れ去った娘を食べてしまうんだとしたら、娘の身体に毒を塗って逆に殺すことが出来ないかと考えました」

「うん?身体に毒を塗ると?トリカブトか?」

「はい、全身に塗って妖怪が食べたらその毒で死ぬかと」

「相手は妖怪だぞ。そのようなことで死ぬとは思えんがのう。みんなはどう思う?」

村人たちは顔を見合わせて頷いたり、首を横に振ったりしていた。

「他に意見が無いのだったら試してはどうですか?効果が無くても何もやらないよりはましだと思うんだけど」

「確かに作治のいう事は一理あるな。ただしどこでトリカブトを手に入れるかが問題だぞ」

「暮れまでにはまだ三日あるので里に下りて手に入れてきてはどうだろう?漢方医を探して頼めないだろうか?」

「漢方医か、それなら上田の庄に一人いると聞いておるぞ。作治、悪いが明日の朝そこへ発ってくれまいか?」

「代金は何を持って行けばよろしいので?」

「困ったなあ。殺されるわけじゃないからましだろう。べっぴんの娘を連れて行け」

「えっ?娘を売り飛ばすって言うんですか?」

「この村には金は無いぞ。米もない。村のため、自分の両親や兄弟のためだと言い聞かせてくれ」

「誰を連れて行けと?」

「それは・・・お前が選べ。選ばれた親にはわしが頭を下げて置く」

作治は漢方医が銀ではなく娘で果たして貴重なトリカブトを譲ってくれるのか疑問に感じていた。
半ばあきらめ気味に選んだ娘を引き連れて、作治は早朝の山道を下って行った。