第二章 サイドストーリーは突然に
「ね、これ使いなよ」
そう言いながらこちらに歩いてきてリョウセイさん。
自分のハンカチを差し出してくれた。
私はこぼれたコーヒーを拭きながら、
すぐ真横にリョウセイさんがいることに変に動揺してしまい早口になって言った。
「いえ、いいです。大丈夫です。ヒロキがお店から借りてきてくれるから。
あれ? もしかしてそれ、そのハンカチって
あのとき、お仕事で『一日デートをする企画』でベンチに敷いてくれたハンカチ?」
ハッと思わず見上げるとリョウセイさんはほほ笑んで顔をクシャっと崩す。
「あ、覚えてた?」
と言ってほほ笑む彼は、あの半年前に見せてくれた優しい笑顔のままだ。
少しほっとしてテーブルを拭く手を止めるとこう言った。
「うん、覚えてる・・あ、いえ、覚えてます。
あの日、初めて会ってお仕事で『デート』をした日のこと
楽しかったですね。あの時は本当にデートした気持ちになっちゃいまいました。
ちょっとだけ・・」
と、ちょっぴり舌を出して照れた私。
それを見てまたクスリと笑ったリョウセイさん。
「そう?楽しかった?良かった!
今、後悔してる。あの時、なんでちゃんと指輪のことを確かめなかったんだろう、君に。」
彼の声の調子のトーンが途中から急に低くなったのにうろたえて
思わずテーブルを拭く手が止めて彼の顔を見る。
長いまつ毛に縁取られたキラキラした黒い瞳がとても澄んでいて
スゥっと心ごと吸い込まれちゃいそうになる。
まっすぐ私を見つめている刺さるような視線?
ちょっとこれ・・
ええ!?何この展開??
思わず動揺して心臓がバクバクしてきた!
イケメン俳優と言われキャーキャー言われることもある(こともある?)
彼にそんなことをマジモードで言われたら
女は嬉しくなるでしょ?いや!困るでしょ!?この場合。
「え・・そ、・・それは
え、なんでそんなこと言うんですか?リョウセイさん」
動揺を隠して平静を装おうとするけど、
なんだかまっすぐ心を貫くような視線に平静を保つことが出来なさそうでそっと目を逸らせた。
「今、僕が君とつきあいたい・・って言っても
ぜんぜん気持ちは変わらないかな? 彼のことが本当に好き?」
ますます距離を縮めて近づき
私の心を推し量ろうとするように様子をうかがうリョウセイさん
「まさか・・そんなことあなたが言うわけ・・」
「ない?・・と思った?」
びっくりして口をパクパクさせる私。
ますます、こちらに近づいてくるリョウセイさん
―― 顔、近すぎます!!!ってば
「え"ぇ"〜〜っっ!!!」
声にならない声が思わずこぼれる。
これって、もはや収拾不可能な展開っていうか、
ていうか、えぇ?何?何なの?こんなに近づいて
そして少し怖い表情になったかと思うとリョウセイさんはこう言った。
「こんなもの・・」
「は・・何? え・・」
驚く私を気にもせずいきなり私の手をとるなり薬指の指輪を無理やり外したリョウセイさん。
「何するの!?」
そのとたんおもむろに遠くに向けて思い切り指輪を放り投げたリョウセイさん。
ーーーー カラ〜ン。。。カラ、カラ。。。
遠くに落ちた金属音が小さく聞こえて消えた。
「えぇぇ・・・リョウセイさん、な、な、なんてことをするんですか!!」
「・・・。」
無表情で私を見おろすリョウセイさん。
途方に暮れて呆然と立ち尽くす、私。
---- 穏やかな季節の、とある日のこと
皆が和やかに談話しているス田バのテラス席に
なぜか不思議な静寂が流れていた
゚・*:.。..。.:*・ではでぱ゚・*:.。..。.:*・゚終わりま〜す ゚・*:.。。.:*・゚
=ということで、いつもの・・to be continuedであります〜♪=
作品名:第二章 サイドストーリーは突然に 作家名:KO-NO-RI