アルラ過去小説おまけ
予想だにしない答えに、アルラの思考はちょっとショートしていた。
紫苑が動きの止まったアルラを無視して、ドアノブに手をかけた直後。小さく耳鳴りがしたと思ったら、目の前に映像が流れ込んで来た。
『ーーーーーー……!』
人影が、何かを叫びながら手を振ってこちらへ駆けてくる。声から察するに、14、5歳程の少年。遠くからぼんやりとだが頭に王冠が乗っているのが見えた。
『ーー様、………アルラ様……!』
顔がはっきり見えそうになった瞬間、風に拐われるように人影は消えた。紫苑は黒い男のセリフを再び思い出す。
"―500年の後、貴様が己の今までの愚行を悔いていたのならば、貴様を救う者が現れる。"
だから、つまり、今のが。あの少年が、きっと。
…見えたのは、そう遠くない未来。
紫苑は振り返り、まだ少しぼーっとしているアルラを見た。
「よかったな」
「…………はい?」
紫苑は笑いをこらえ、アルラの返事も聞かず家を出た。
作品名:アルラ過去小説おまけ 作家名:如月桜華