乙女たちの幻想曲 第2回 風の吹く場所へ
鳥の後を追いながら進んでいくと、2人はいつの間にか森を抜け、別の地に来ていた。そこの地面は真っ白で、踏んだ感じが、低反発枕の上でも歩いているかのようなものだった。
森の出口から100メートルほど先まで進むと、2人を連れていった鳥は、彼女たちの後ろに飛び、少し離れて地面に下りた。
すると、風美歌たちは、そよ風よりもやや強い向かい風を顔に受け、顔を僅かに上に向けた。
その直後であった。何と、颯がゆっくりと目を開いたのだ。彼の目の前には、真っ白な地面が見えている。彼は、驚きのあまり声を漏らした。
「颯はん、どないしたん?」
颯は、風美歌のほうをくるっと向いた。彼の両目は開き、潤んでいる。
「風美歌さん、あなたの姿がよく見えます」
その声を聞いた風美歌は、いよいよ小刻みに震え出した。
「え、ほ、ほんまに?」
「はい、とても愛らしいです」
少女もうれしさのあまり目に涙を浮かべ、ギリシャ彫刻のような顔の青年と抱擁を交わした。
作品名:乙女たちの幻想曲 第2回 風の吹く場所へ 作家名:藍城 舞美