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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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探し当ててもらえないサツマイモ…。

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知り合いから貰ったサツマイモの苗をお母さんは畑に植えた。
これがちゃんとサツマイモになるのか心配になるお母さん。
初めてサツマイモを育てるお母さんは、人から教わった通りにやっていた。
そんな気持ちの中、収穫の秋が訪れた。

葉っぱは広がりに広がり、畳十畳ほどになった。
しかし葉っぱだけかもしれない…とお母さんと私の頭には過る。
そしてお母さんは一人、畑へと駆り出て、いざイモのツルを引っ張ったらしい。
私はその様子を電話越しに知らされるばかりで、畑を直接楽しんではいない。
葉っぱの付いたツルが見事に芋づる式でブチブチブチブッと取れたようだ。
その時のお母さんのショックと言ったら、果てしなく落ち込んだようだ。
収穫の一ヶ月ほど前、孫たちに、
『一緒に芋掘りしようね!!』
と約束していたのに、それも出来ない…とお母さんはその瞬間落ち込んだ。
落ち込んでいながらも本当に全くイモはないのかと土を掘ってみたらしい。
そしたら、大きなサツマイモがわんさか出て来て驚いたとの事。
これで無事孫たちを呼べると一安心。

お母さんは一人畑で掘りまくったようだ。
採れたてをすぐに天ぷらにして食べたと電話があった。
食べられない私は何を思えばいいのだろう…。
そんな事を思いながらお母さんと話していると上(神様)が出て来て、
『お母さん、私も頂いてよろしいですか。』
と言って来た。
お母さんは、
『どうぞ、どうぞ。どんどん食べてください。』
と言う。
私は食べられないのに上の言葉を伝える役…。
上が、
『お母さん、おいしいですね~。どうですか、一生懸命作ったサツマイモの味は。』
と聞く。
『はい、頑張って作りました!!』
とお母さんは元気よく応える。
『あっ、そうですか。一生懸命作ったんですか。私から見ていたら、そう一生懸命でもなかったように見えましたよ。』
とこんな風に言ってくる。
お母さんから、
『あっ…。』
と声が漏れた。
『まっ、それは良いとして、みんなで作ったサツマイモをみんなで大事に食べましょうね。』
と上は言った。
お母さんは、
『みんな…?!』
と首を傾げているのかそんな空気が伝わった。
お母さんは何のことやら…と分からないようなので上が口を開いた。
『お母さんが畑を頑張ると言った時に、私はその時に何と言ったか忘れましたか。』
お母さんからは、
『・・・。何か言ったかなぁ~。』
との回答。
上は少し呆れて、
『私はあの時、お母さんが畑を頑張ると言うので、畑にいる私の仲間たちに、“お母さんの為にたくさん実りなさい。大きく広がりなさい。”と言いましたよ。』
と言った。
お母さんは思い出したようで、
『あ~、あ~、あ~、はいはいはい、言った、言った。確かに言った!!思い出した!!…あっ、これはどうもありがとうございます。おかげさまで実り過ぎて食べこなせません。』
とお礼?!を言った。
上も眉間にシワを寄せ首を傾げたが、気持ちを切り替え、
『はい、そう言いましたね。お母さんは忘れていましたけど…。でも、そのくらいが丁度良いのです。“神様がいるからちゃんとしないと…。”と思ったり、“神様の為に良い野菜を作らなければ…。”と思ったり…、そんな事は思わなくても良いのです。私は見えないのですから思えないというのも一つです。それよりも一生懸命する事の方が大事だと私は思いますよ。天ぷらは美味しいですね。』
と言った。
それを聞いたお母さんも気持ちを切り替えたのか開き直ったのか、
『はい、そうします。いつも上のことはついつい忘れてます!!どんどん天ぷらを食べてください。』
と訳の分からない返しをした。
上の顔が見えたので、私はお母さんに、
『お母さん、上が難しい顔をしてるよ。…でも上がお母さんに、“それで良いと思いますよ。”だって。』
と伝えた。
お母さんはそれでも、
『大丈夫。上はお母さんの気持ちをちゃんと分かってるからいいの。』
と言った。
上は黙って肯いた。
よく分からないが、二人の間柄はそういう事でいいようだ。
それよりも私はやっぱり天ぷらを食べられない…。
『お母さん、天ぷら美味しい?!』
と聞いたら、
『うん、美味しかった~。』
と思い出を伝えて来るだけ。
食べたいと思う私に上が、
『あっ、私の食べかけですみません、どうぞ。』
と私の口の前に熱々の天ぷらが届いた。
たまにあるのでまあいいけど、食べかけかぁ~と思う私に、新しい天ぷらに変えて、
『どうぞ。』
と言って来た。
申し訳ないので、
『あっ、食べかけでも良いです。』
と私は心で応える。
兎に角熱々の天ぷらが目の前にあるので、心の私が一口頂いた。
『…お母さん、天ぷら美味しいね~。』
と感想を述べた私に、
『あっ、上がくれたの?!美味しいでしょ?!良かったね!!』
と普通に返して来た。
やっぱり私たちはこんな間柄のようだ。

そして、それから次の休みくらいにお母さんは約束通り孫たちを呼んだ。
畑で芋掘りを始めてしばらくするとお母さんにちょっと用事が出来たらしく、二十分ほど孫たちを畑に残し、芋掘りをしながらついでにお留守番もしてもらったようだ。
たった二十分ほどなのに、たったそのくらいの時間なのに、孫たちは頭から土まみれになっていたとの事。
お母さん曰く、初めの一掘りから土が宙を舞ってたらしい。
それでもお母さんがいない間に、孫たちはサツマイモを何本かは掘り当てていたようだ。

そして食べては収穫、食べては収穫…を繰り返すこと一ヶ月近く。
だんだんとサツマイモを掘り当てられなくなって行った。
掘り当てられなくなったお母さんはイライラしながら私に電話を掛けて来た。
『もう、イモがないっ!!』
と…。
『そりゃ~、いつかは終わりが来るよ。永遠には出来ないからね~。』
と私は当たり前の事を言った。
でもお母さんは納得行かないようで、尚も、
『掘っても掘ってもイモがない。』
とぶっきらぼうに言う。
『イモがないないって言って、何本くらい食べたの?!そんなに食べてないから言うの?!』
と私は聞いた。
『ん~…、百本は掘った。百三十本くらいは…、大・中・小合わせて…、そのくらいは掘った。でもまだイモを食べたいから…。』
『そんなに掘ったの?!それなのにまだいる?!もうないと思うよ…。あっ、上が、“まだあると思いますよ。”だって。』
と私は言った。
お母さんの声が輝いて、
『ウソッ?!まだあるって?!どこどこ?!』
と聞いて来た。
私には分からないから何とも言いようがない。
上が口を開かない限り知る由はない。
なので、
『私は分かりません。それよりもそんな数食べたの?!』
と聞いた。
『いいや~、食べてないよ~。ご近所さんにあげたり、お世話になった人たちにあげたりした。だからもうないの!!お母さんは芋餅を作りたいからまだ欲しいの。で、何処にあるの?!』
とお母さんは聞いて来た。
『上は、“まだあると思いますよ。”しか言わないからそれくらいしか分からない。お母さん、頑張って掘ったら?!』
と食べられない私は言う。
お母さんは渋々納得した。

それから一人でお母さんはちょこちょこイモを探しに畑に出たけど、小さいイモがたまに見つかる程度で、それ以上の結果は出なかったようだ。