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ギブアンドテイク【番外編】

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陽が沈んで、テレビがバラエティー番組ばかりになったころ。


「ただいまー」

「おかえり、花田ちゃん。気をつかわせてごめんね。せっかく来てくれたのに」

「いいのいいの。たきもっちゃんには悪いけど、たのしかったから」


人の一大事を「たのしかった」で済ませるのはいただけないが、気分を害した様子もなく、花田さんは手荷物を増やして帰ってきた。

俺の視線に気づいて、彼女はいたずらっ子のように微笑んだ。

ーー手荷物をかかげて。


「2人とも、おなかまだ余裕ある?」

「あるけど……?」

「ケーキ買ってきたから、食べようよ」


その一言に、滝本からは「やったー!でもなんで?」と素直な言葉が出た。

俺も滝本も誕生日ではない……まさか、自分の誕生日ケーキ?

そう思った俺にかまうことなく、彼女は俺の片付けたテーブルに箱を置いて、ホールのショートケーキを出した。


「わあ……!」

「あー……!」


滝本と俺は、同時に声をあげた。

なぜならそれは、


「だいぶ過ぎてるし、式は先だけど。2人にちゃんとおめでとうって言っておきたかったのよね」


新郎新婦を見立てたクマの砂糖菓子。

チョコプレートには、「ハッピーウエディング」。

小さくても、それはウエディングケーキと呼ぶべきだろう。


「結婚おめでとう!」


花田さんが、俺と滝本に笑顔で言う。

もう、言葉につまる。

親以外の人に、こうやって祝福されたのは初めてだから。


「ありがとう花田ちゃんありがとうこんなサプライズずるいようれしいよ」

「よろこんでくれてうれしいよ。せっかくだから、2人で切ってよ。ケーキ入刀」

「うん!」


花田さんがカメラを向けるなか、飾り気のない包丁を2人で持ってショートケーキを切り分けた。

とんでもなくはずかしかったが、滝本が笑顔だからどうでもよくなった。

滝本がキッチンで紅茶をいれてくれる間、花田さんが小声で「どうだった?ヤキモチやいた?」と聞いてきた。


「まあ……でも、滝本の方が大人だった。俺の方がよっぽどガキな考えだった」

「あはは、そうかもね。ーーん?たきもっちゃんのこと名前で呼ぶのやめたの?」

「あー……こっちの方がふつうだし、無理して変えなくてもよかったかなって」


背のびしなくても、俺たちは俺たちだから。

変えようとしなくても、変わるときは変わるのだ。

全部、気長に待つしかない。



【はじめましてだんなさん・おわり】