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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「優しさの行方」 第三話

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「明日私と一緒に帰る?向こうなら現れないと思うよ。通学は時間がかかるけど、はっきりと解るまでしばらくそうしたら?」

「うん、そうしようかな」

翌朝必要な物だけカバンに詰めて友幸は母親と落合村へ帰ってきた。
あらかじめ姉にはこの話をしないで欲しいと母に頼んだ。
家族三人でその夜は寝た。理由はともかく静江がそうすると言い出して布団を敷いていた。

次の日もその次の日も夢の中にたまきは現れなかった。
私はもうこの少女はどこかへ行ってしまったのだろうと考えていた。
一週間が過ぎて母が頼んだ霊媒師が自宅へやってきた。
物々しい服装の年配男性である彼は友幸をじっと見た。

「息子さんは見たところ何の気配も感じぬがどういうことだ?」

「先生、息子は名古屋のアパートで毎夜少女に話しかけられる夢を見るんです。
その少女には息子が見えるようで、なぜそのようなことが起こるのか不思議なんです」

静江は心配な表情でそう聞いた。

「息子さんの姿が見えると?そう言っているのか?」

「はい、夢の中で今日起きたこと、息子がしていることを言うそうです」

「う~ん、夢だから自分のもう一人という事も考えられるぞ」

「もう一人の自分を見ていると?少女の姿で?という事ですか?」

「強い願望が幻想となって夢に現れるという事かも知れぬ」

「しかし、そのアパートの部屋ではこれまで住んだ女性のみんなが変な物音に悩まされて出て行ったと大家さんは話したそうです」

「物音がすると?深夜にか?」

「はい、そうです。私も初めて息子の部屋に泊まった時に聞こえました。それは空耳では決してありません」

「その現場に居合わせないと何とも言えぬな。一度アパートに帰って夢を見るようになったら私が訪ねて調べてみよう」

「本当ですか?よろしくお願いします。ここしばらくは友幸も夢を見ていないそうなので、帰っても見なくなるかも知れませんね」

「そうだと良いが、あまり気にしないで暮らしなさい。こちらも準備だけはしておく」

霊媒師は帰って行った。
帰る決心をした私は荷物を再び抱えて落合駅から国鉄で千種まで行き、地下鉄今池駅で降りてしばらくぶりに部屋に入った。
休んでいたバイトを再開して、戻ると銭湯に行き帰って来てすぐに疲れからか眠りに就いた。