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ギブアンドテイク【後編】

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慣れた道を歩いた。

荒れまくった部屋の掃除は正直めんどくさいが、この道をこんな辛気くさい顔で通ったことはなかったな。

感傷にひたってたら、あっという間に見慣れたアパートの部屋の扉。


「押す、ぞ」


決心して、そっと触れただけのはずなのに、薄いドアの向こうで大きくインターホンが鳴ったのがわかる。

モニターついてるやつじゃなくて良かった、いやついてるとこじゃないと不安だけど。

きっと、誰かも分からずに開けてしまうバカだから。


「はーい……ーーっ!」

「うわ待て!ーーいっ!!てえ」

「……あ、あ……大丈夫?」


自分が片足引っかけてまでドアを止める日が来るとは思わなかった。

痛みに顔がゆがむが、ひるんだ彼女が心配そうに見てくる。

大丈夫じゃねーよめちゃくちゃいてーよバカ。


「なんで着信拒否なんてしたんだ」

「……ごめん」

「心配するだろ」


怒りたかったのに、もう出鼻くじかれたし痛いし、思ったままの言葉しか出なかった。

いや、この際出鼻くじかれてよかった。

ちゃんと、素直になれるから。