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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「恋愛病院 不倫病棟」 第四十二回

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「先生、ちょっと寄ってゆきません?喉乾いたでしょ?」

「えっ?こんな時間だよ」

「別にいいじゃない。一人暮らししてますから」

「そんな、帰れなくなっちゃうじゃないか」

「なら、明日の朝私が先生の停めたパーキングまで送りますから、ね?いいでしょ?」

志津の強い誘惑に負けないでおこうとする鉄男と何もしなければ問題はないと言い聞かせて車を降りようとする鉄男が葛藤していた。

「先生とこうして同じ方向に来たのも縁ですわ。さあ、降りましょう」

手を掴まれて引き出されるように鉄男はタクシーから降りた。目の前の高層マンションのエレベーターホールで志津はもたれかかるようにして腕を組んだ。

「志津さん・・・」

「先生が・・・好き」

「本気で言っているのか?会ったばかりで」

「だって、私の事好みって言ってくれたから」

「それは・・・挨拶だよ」

「ううん、先生はそんな人じゃない。女性を悲しませるような人じゃない」

「参ったなあ~酔っているみたいだね。傍に居てあげるけど、それだけだよ」

「着いたわよ!ここ。お入りになって」

通された部屋はきれいに片づけられていた。鉄男はダイニングのソファーに腰かけて、コーヒーを入れるからと席を立った志津の後姿を見ていた。
それは早奈枝には無いスリムな男のように端正な下半身と明らかに異なる柔らかな上半身との組み合わせであった。

夜景が見える窓越しに志津はコーヒーカップを持って立っていた。

「先生、ここから見る夜景が好きなの。それぞれの窓の明かりにそれぞれの暮らしがあるんだって考えて。自分は幸せだけど、何かが物足りないって思う時、早奈枝さんのことが羨ましく感じるの」

「家族があると思うからか?」

「ううん、先生のことずっと好きって思い続けられるから」

「片思いだぞ」

「女はそれでもいいのよ」

「志津さんは稀なる美女だよ。男なんていくらでも近寄ってくるだろう?」

「体目当てよ。52歳の女に本気で惚れる男なんて居ないし、居ても自分から魅力に感じる相手だったことは無いの」

志津は振り向いて手に持っていたカップをテーブルに置いた。

次回へ続く。