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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「優しさの行方」 第一話

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母には助けてもらって、その代わり卒業してから一流企業に就職して返そう、そう考えていた。
バイトが始まって帰りが23時を過ぎる毎日だった。銭湯は歓楽街の外れにあるためか、0時までやっていたのでぎりぎり間に合っていた。
その日、帰り道でいつも気になっているビニ本の自販機の前に立っていた。

400円と書かれたコイン口にポケットから小銭を出して差し込む。
やがてドスンと音がして受け取り口にビニールに包まれたエロ本が落ちてきた。
ワクワクしながら家について見ることを楽しみに顔はにやけていた。
母には見せられない内容の雑誌だった。

最初のページの見開きには外人のヌードがあの部分をマジックインクで塗りつぶされて掲載されていた。
そのページを破り蛍光灯に透かして見ると、黒い部分の中にうっすらと女性のヘアーが見えていた。過去女性と付き合ったことはあったがキスぐらいで体は見たことも触れたことも無かった友幸であったから、強い興味を持っていた。

「シンナーで拭き取ったら見えるかも知れない」
そう感じてスーパーでベンジンを買って試してみた。確かにマジックインクは薄くなったが、それに伴って写真も剥げてしまった。
それでも少し見えそうなあそこを想像しながら寝る前に右手で自分の大きくなったモノをしごいて、ティッシュの中に出すのが休み前の楽しみになっていた。

何度かその行為をしていたある夜、異変はついに男性の友幸にも感じられるようになったのだ。
出したものを始末して、スッキリとした気分で布団をかぶって目を閉じるとこれまでに経験したことのない物音が押入れの中から聞こえてきた。

「母が聞いたのはこれだったんだ」

静かに押入れに近寄り、一気に扉を開けた。

「誰かいるのか!」
そう叫んだ。

真っ暗な中でその気配はなくなっていた。丁寧に明かりをつけて中を見たが、変わったことは何もなかった。

「やっぱり気のせいなのか」

友幸はため息を大きくついて寝ることにした。
休みの前日、本棚に立ててあったエロ本を取り出して中を開くと、苦労して見えるようにしたページが無くなっていた。
誰も部屋には入ってきてないし、自分が捨てるなどという事はあり得なかったから、必死で本棚とその周りを探したが、見つけられなかった。