「優しさの行方」 第一話
翌日そのことを友幸に話すと、気のせいだろうと言われた。
多分そうだろうが、静江には気のせいだとは思えないようなはっきりとした物音が耳に残っていた。
母が帰って行って、大家に正式に引っ越しの挨拶をした。その時にここが空いていたのは偶然なのか聞いてみた。
「こんな良い場所が空いていただなんて幸運ですよねボクは。前に住んでいた方は長かったんですか?」
「村山さん、正直に言いますが、今のお部屋は入られた方が理由は仰らないのですが直ぐに出て行かれるんです。こちらとしては入れ替わってくれる方が礼金が入るので嬉しいのですけど、長く住んで頂く方が安心ですのでぜひ大学卒業まで住んでくださいね」
「すぐに出て行かれる理由はなんでしょうか?」
「何でも気になる音がするとか言われるのですが、調べてもそう言う気配は無かったし気のせいだろうと思ってはいるのですけど」
「昨日母が同じような経験をしたようです。物音を聞いたとか今朝ボクに話してくれました」
「そうでしたか。女性にだけ聞こえるのでしょうかね・・・今までの入居者は皆さん女性でしたから」
「不思議ですね。物音がするのなら男性も女性も無いと思います」
「まあ、そう言う事ですね。お気になさらないで下さい。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
話はそれで終わっていた。
大家も契約前にはそのことを黙っていたから、多少は気にしているのだろう。
しばらくぶりに男性の契約者だという事で関係が無いと考えたのかも知れなかった。
それと男性には聞こえないという事も本当にそうなのだろうかという疑問に感じられる。今夜は母が居ないので物音は自分には聞こえないかも知れない。
そんなことをちょっと思いながら気にしてみたが何事もなく朝が来た。
学校の授業が始まるまでにバイト先を見つけないといけないから、アルバイトニュースを買って条件の合うところを探した。
東西の通りを南に二つ横切った先でピザレストランの募集があった。さっそく面接に行き、働くことが決まった。
場所柄深夜までやっていて、学校から帰って来て賄い付きで5時間ほど働けた。
時給は250円だから一日1250円、定休日があるから月に25~26日の仕事で31250~32500円になる。
家賃8000円と電気水道代払うと残りは20000円余り。夏はまだしも冬の暖房を考えると授業料までは払えない状況だ。
多分そうだろうが、静江には気のせいだとは思えないようなはっきりとした物音が耳に残っていた。
母が帰って行って、大家に正式に引っ越しの挨拶をした。その時にここが空いていたのは偶然なのか聞いてみた。
「こんな良い場所が空いていただなんて幸運ですよねボクは。前に住んでいた方は長かったんですか?」
「村山さん、正直に言いますが、今のお部屋は入られた方が理由は仰らないのですが直ぐに出て行かれるんです。こちらとしては入れ替わってくれる方が礼金が入るので嬉しいのですけど、長く住んで頂く方が安心ですのでぜひ大学卒業まで住んでくださいね」
「すぐに出て行かれる理由はなんでしょうか?」
「何でも気になる音がするとか言われるのですが、調べてもそう言う気配は無かったし気のせいだろうと思ってはいるのですけど」
「昨日母が同じような経験をしたようです。物音を聞いたとか今朝ボクに話してくれました」
「そうでしたか。女性にだけ聞こえるのでしょうかね・・・今までの入居者は皆さん女性でしたから」
「不思議ですね。物音がするのなら男性も女性も無いと思います」
「まあ、そう言う事ですね。お気になさらないで下さい。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ」
話はそれで終わっていた。
大家も契約前にはそのことを黙っていたから、多少は気にしているのだろう。
しばらくぶりに男性の契約者だという事で関係が無いと考えたのかも知れなかった。
それと男性には聞こえないという事も本当にそうなのだろうかという疑問に感じられる。今夜は母が居ないので物音は自分には聞こえないかも知れない。
そんなことをちょっと思いながら気にしてみたが何事もなく朝が来た。
学校の授業が始まるまでにバイト先を見つけないといけないから、アルバイトニュースを買って条件の合うところを探した。
東西の通りを南に二つ横切った先でピザレストランの募集があった。さっそく面接に行き、働くことが決まった。
場所柄深夜までやっていて、学校から帰って来て賄い付きで5時間ほど働けた。
時給は250円だから一日1250円、定休日があるから月に25~26日の仕事で31250~32500円になる。
家賃8000円と電気水道代払うと残りは20000円余り。夏はまだしも冬の暖房を考えると授業料までは払えない状況だ。
作品名:「優しさの行方」 第一話 作家名:てっしゅう