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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「優しさの行方」 プロローグ

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昭和四十八年三月、二年も浪人してやっと念願の志望大学に合格した私は、母に引っ越しの準備のための買い物に付き合って貰っていた。

「友幸、名古屋での住むところは見つかったのかい?」

母親は引っ越しをするアパートがまだ見つかっていないことを気にしてそう尋ねた。

「母さん、それがね頼んでいた友人から連絡があって、何でも地下鉄の出入り口のすぐ横に立っている三階建ての鉄筋アパートが空いているからどうだって言ってきたんだよ」

「それは便利そうだけど、高いんじゃないのかい、家賃が?」

「一間だから八千円って言ってた」

「本当かい?それなら嬉しいけど」

「ああ、明日にでも行って見てくるよ。契約するなら保証人になってね」

「ああ、いいよ。私も行かなくていいのかい?」

「一緒に来られるの?だったら一度で済むからいいけど」

「じゃあ、そうしましょう」

母はパートの休みを取って自分のために付き合ってくれた。住んでいる岐阜県の長野県との県境の村、恵那郡落合村(現中津川市落合)にはまだところどころ雪が残っていた。

自転車で国鉄落合駅まで行き、名古屋市の千種駅(ちくさえき)で地下鉄に乗り換えて今池で下車。3番出口を出てすぐのところに友幸が友人から聞いていたアパートは建っていた。
三階建ての一階は不動産屋の事務所になっており二階と三階がそれぞれ四部屋ずつの計八部屋の鉄筋アパートになっていた。
道路に面した東側の二部屋が二階三階とも2DKで家賃は風呂付で二万五千円、陽の当たらない西側の二部屋が二階三階とも風呂無し1Kで家賃は八千円だった。

大家から二階の奥の1K部屋が空いていると聞かされて、私は母と一緒に見せてもらうことにした。

「村山さん、こちらの部屋です。陽当りは悪いのですが学生さんの独り暮らしなら地下鉄の駅も直ぐですし、便利で家賃も安くなっていますのでいかがでしょうか?」

「そうですね。ここなら便利だし、近くに大きなスーパーもあるから買い物にも不自由しなくて済むわね。ここにしたら?友幸」

「母さん、決めるよ。ここにする」

「あのう、大家さん。近くにお風呂はあるのですか?」

「ええお母さま、前の道を駅と反対側に5~6分歩かれると銭湯があります。駅の方へ歩くと信号渡ってその次の信号交差点から西側は飲食街です。屋台も出ていますし、独り暮らしにはもってこいだと思いますよ」