難民
明らかに遠い異国の言葉だった。彼らは密航をビジネスにしている輩だった。金儲けのためなら何でもやりかねない連中だったが、彼らに身を委ねなければ、希望の地に行けないのは事実だった。
旅立ちの日、眠る妹に気付かれないようにそっと起き、そして漁夫の家を出た。
別れを告げなかった。
妹も目を覚ましてした。
兄が出ると、妹は漁夫に「ごめんなさい」と言った。
「いいんだ。行きなさい」と言った。
妹は走った。
そして港で追いついた。
振り返った兄に言った。
「私も行く。絶対についていく」
「ここで、あのおじいちゃんで暮らす方が幸せかもしれない」
「それでも行く。だって、私にはお兄ちゃんしかいないもの」と泣いた。
小さな小舟で何日も乗った。
昼と夜の違いも分からなくらいお腹が空いた。
やがて、小さな島についた。
町があった。
そして、難民が押し込められているキャンプに連れていかれた。
そこでミヤにあった。半年ぶりのことだった。
ミヤは病んでいた。
「ここに幸せはなかった。言葉も満足に通じない国。この小さな、囲いに囲まれたところでしか動けない。故郷で方がよかった。戦争さえなかったら」とミヤは泣いた。
「国に戻りたい」と泣いた。
「お父さんは?」と聞くと、
「殺された」と声をあげて泣いた。
彼女の話では、荒れた日、船は多くの人を乗せていたが、船を軽くするために、何人かが得らばれ。荒れた海に放り出されたという。不幸なことに、その何人の中にミヤの入ってしまった。
その日を境にして、ミヤは体調を崩したという。
「船に乗ってきたのに、幸せはなかった」とまたミヤは泣いた。
キャンプから離れたところに華やいだ街があった。青い海があった。人々は幸せに暮らしていた。しかし、難民キャンプに閉じ込められた者はそこにたどり着けなかった。なぜなら、鉄条網と銃によって隔離されていたからである。