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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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偉そうなアボガドさんのお引っ越し。

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草取りをしながらアボガドさんと会話でも…と思ってたけど、子どもたちがいるからかアボガドたちは無言だった。
たまに存在をアピールして来た。
子どもたちは私の今の状況を知ってはいるけど、なかなか説明のしようがなくて、そんな事もアボガドたちは理解の上での反応なのかもしれない。
子どもには優しいようだ。
でも一応、
『アボガドさんがお母さんのお家にお引っ越ししたいって言ったから連れて来た。ここに植えてあげるから草取りしてるの。』
と子どもたちに伝えた。
どう感じたかは分からないけど、
『じゃあ、草取り頑張る。』
と言って、クワを持って来たりカマを持って来たり、スコップを持って来たりしては各々で試行錯誤していた。
そんな姿をアボガドはどう見てるのかと思い、たまにアボガドの方を見たりしていた。
申し訳ない中会釈して、感謝をしているようだった。
やっと草取りが終わると次は土を耕し穴を掘る作業。
これが本当に辛かった…。
普段は何も植えてない畑の端っこなので、土は固いし石は出て来るしで参った~。
それでも三人で適当な会話をしながら掘った。
穴を掘り終わるとそこに土と混ぜた肥料を入れた。
そして遂に念願の畑へのお引っ越しとなった。
鉢から出すためにアボガドを倒して、鉢を叩いて揺さぶりながら出した。
子どもたちがいる事も忘れたのか、アボガドが慌てて、
『あいちゃん、優しく優しく!!木が折れる~っ!!』
と訴えて来た。
私は無言で対応したつもりだったが、もしかしたら何か言葉を発していたかもしれない。
そして、鉢から出たアボガドを起こして穴に植え始めたら、
『あ~あ、葉っぱが土まみれ…。』
とショックを受けていた。
“そんなもの後で水をかけたら綺麗になる。”と心の声で伝えた。
そして土を盛って足元を山状にした。
子どもたちが離れた所で違う遊びを始めたので、
『どうですか?!念願の畑は?!肥料もバランスはいい?!』
と私は聞いた。
『まだ、根っこが安定してないから、先ずは根っこの安定を頑張る。なので、たくさんお水をかけて。』
と注文が来た。
ジョロに水を入れて掛けてはまた水を汲んで…を繰り返した。
疲れたしジョロも重たいので、まだ欲しがるアボガドに、
『もうお終い!!少しは自分の力で頑張るの!!根っこを広げるっ!!』
と言って終わった。
次に二号さんのお引っ越し…となったけど、お母さんに、
『まだ小さいから、雨風に負けると思うから、大きい方のアボガドが使ってた鉢に移して。』
と言われていたので、牛乳パックから鉢へとお引っ越しとなった。
肥料をたくさん混ぜた土を作ってあげた。
牛乳パックがかなり狭かったようで、
『広~い。気持ちいい~。』
と言っていた。
そしてそれから毎日水やりをした。
偉そうなアボガドさんと二号さんは二十メートルほど離れていた。
この距離がまた面倒臭くて、偉そうな方は悪くないのに、
『遠すぎっ!!』
とジョロを持って行く度に私は言っていた。
そんな私に偉そうなアボガドは小さな声で、
『あいちゃんが決めた…。』
と言い返しになるのか分からないけどそんな事を言っていた。
『今、私が水をあげてるから良いけど、私が帰ったらこれ全部お母さんに変わるんだからね!!お母さんに変わる意味分かる?!手抜きになるって事っ!!だから今こんな風に水もらうだけでも良い方なの。』
と私は言った。
小さな声で肯いていた。
お母さんを甘く見てたんだろうなぁ~なんて思った瞬間だった。

そして私は帰って行った。

それから二ヶ月ほどして、お母さんの電話で、
『ちゃんと水あげはしてます。』
と言うお母さんの言葉に対して久しぶりに偉そうなアボガドの声がした。
『“水はくれるけど、話しかけてはくれな~い。無視。”って言ってるけど…?!』
と私はお母さんに伝えた。
一瞬お母さんは黙って、
『えっ?!…うん、話しかけてない。大体話しかけたらおかしな人って近所の人に思われるでしょ?!ちゃんと水はあげてるんだからそれでいいの。』
と言い返して来た。
そのお母さんにアボガドは、
『“でも、毎日はくれませんよ~。思い出したらくれる~。”って言ってるよ。』
と私は伝えた。
お母さんからため息が聞こえて、
『はぁ~っ、そう。いつもはあげてない…。でも畑だからいつもあげなくて大丈夫。』
と言う。
その言葉に二号さんが、
『“鉢は毎日必要ですよ~。あっ、お母さ~ん、葉っぱの上からかけてくださいね~。”だって。』
と伝えたら、またお母さんからため息が聞こえた。
『はぁ~、バレてるねぇ~。でも、ちゃんと葉っぱにはかけてます。』
とお母さんは言う。
そして偉そうなアボガドが、
『“こんな感じがお母さん畑かぁ~。”って言ってるよ。アボガドさ~ん、忍耐よ~。忍耐。お母さんは厳しいよ~。』
とお母さんとアボガドに伝えた。
アボガドは肯きで答えた。
お母さんからはため息だけが聞こえた。

アボガド二人はお母さん畑がどんな所か身を持って感じている事だろう。
と書いていたら久しぶりに偉そうなアボガドさんから声が聞こえた。
『身に染みて…じゃないな、幹にまで染みて感じてる。』
との事です。

それからしばらくして、お母さん畑を見渡している姿の偉そうなアボガドさんが見えてふと、
『おのおのかぁ~。』
と言って来た。
私は意味が分からなかったので、眉間にシワを寄せ首を傾げた。
そしたら、
『ここの畑は各々が各自自力で生きなきゃいけないと知りました。お母さんからの助けに頼っちゃいけないというか、お母さんは何もしてくれないって分かった~。…はぁ~、おのおのかぁ~。頑張る…。』
とアボガドは言う。
『しょうがない!!自分で引っ越すって決めたんだからしょうがない。そこで実を付けるって言ったんだからしょうがない。おのおので頑張んなさい。』
と私もこうなった経緯を改めて話した。
アボガドは何度も深く肯く。
この事をお母さんに電話で伝えた所、
『そうよ、ここはおのおのよ~。ここは誰もが一人一人、各自で頑張る所。人間も植物も、金魚もメダカも関係ないですよ~。なので、おのおの頑張ってくださ~い。』
とお母さんは電話しながらアボガドに向けて言った。
空を見上げてため息を付く偉そうなアボガドさんが見えた。
二号さんはというと、ビビっているような姿に見える。
だから何も言わないのかもしれない。

今日もそんな姿でおのおの頑張って生きているようです。
実を付けるのはいつになる事やら…。