星屑サンタ
星屑サンタ
私はどこにでもいるパート主婦
街のスーパーでクリスマスケーキを売りながら、浮かれたそのイベントの日は過ぎてゆく。
「お疲れ様~」誰に声かけるでもなく事務所を後にした私は時計を見た。
夜10時 クリスマスイブだというのにこんな時間までも働いている。
息子は外泊すると言っていた。相方は明日、早朝の仕事があるから今夜は先に寝るからと今朝の出際に言っていた。すでにもう寝付いてる頃だろう。今に始まったことじゃない。
暗い夜道にヘッドライトが先を照らす。市街地を抜けて、街灯がまばらな道を走る。
そういえば今年はイルミネーションも見ないままだったことに私はやっと気がついた。
左手にこの街を見下ろす丘の公園がある。
ちょっと小高い山の上に登ってみよう。私はこのまま帰るのもなんだし、普段しないような行動に出た。まあハンドルを左に切って車を走らせただけのことだけど。
坂道のカーブを曲がるたび、眼下に光る我が街が見える。
クリスマスイブの午後10時、頂上の公園には誰か居るかなと思ったが田舎なんだろう、車は一台も駐車しておらず人影はなかった。
生まれ育った自分の街が眼下に見える。イルミネーションほどではないが街の煌きが冬の空気に揺らいで見える。こんな深夜に初めて来たけど割といいじゃない。
若い時過ごしたクリスマスを思い出す。
今考えれば、見栄えのいいレストランで食事、それからホテルへと私を誘って通り過ぎた男たちが懐かしい。
なんて浮かれてたんだろう。やはりクリスマスマジックか?
プレゼントとたいした額でもない奢りで、その日を許した自分が可愛い。若かったな。
静かな丘の公園に登って来る車の音が聞こえてきた。この夜景を見に来たカップルだろうか?
少し離れた隣にその車は停まった。つい身構える。
帰ろうかしら。
ドアが開きルームランプが点灯する。車から出てきたのは初老の男だった。男は後部座席からなにやら取り出している。なんだろう?
それは割と大きなクリスマスツリーだった。引きずり車のそばに投げ捨てるのが見えた。
それから数度、車の後部座席に身体を入れ何かを取り出し、次々とツリーのそばに投げ捨てる。それはクリスマスの飾りのようだった。
そして火をつけた。
焚き火?こんなところで?
非常識じゃないかしら。
関わり合いたくなかったが、いらぬ正義感が出てひとこと言いたくなった。
「あの~こんなとこで焚き火なんて危ないんじゃないですか」
初老の男は構わず、よく燃えるようにツリーを手に取リ動かしている。
地上に輝く街の灯と同じくらいの数の火の粉が、夜空に昇っている。
男は無言で上を向いていた。
燃える炎に照らされた男のその目に涙があるのを私は気がついた。
泣いている・・・。
「あの~・・危ないんじゃないですか・・・」私の二度目の呼び掛けは小さな声になっていた。
私はどこにでもいるパート主婦
街のスーパーでクリスマスケーキを売りながら、浮かれたそのイベントの日は過ぎてゆく。
「お疲れ様~」誰に声かけるでもなく事務所を後にした私は時計を見た。
夜10時 クリスマスイブだというのにこんな時間までも働いている。
息子は外泊すると言っていた。相方は明日、早朝の仕事があるから今夜は先に寝るからと今朝の出際に言っていた。すでにもう寝付いてる頃だろう。今に始まったことじゃない。
暗い夜道にヘッドライトが先を照らす。市街地を抜けて、街灯がまばらな道を走る。
そういえば今年はイルミネーションも見ないままだったことに私はやっと気がついた。
左手にこの街を見下ろす丘の公園がある。
ちょっと小高い山の上に登ってみよう。私はこのまま帰るのもなんだし、普段しないような行動に出た。まあハンドルを左に切って車を走らせただけのことだけど。
坂道のカーブを曲がるたび、眼下に光る我が街が見える。
クリスマスイブの午後10時、頂上の公園には誰か居るかなと思ったが田舎なんだろう、車は一台も駐車しておらず人影はなかった。
生まれ育った自分の街が眼下に見える。イルミネーションほどではないが街の煌きが冬の空気に揺らいで見える。こんな深夜に初めて来たけど割といいじゃない。
若い時過ごしたクリスマスを思い出す。
今考えれば、見栄えのいいレストランで食事、それからホテルへと私を誘って通り過ぎた男たちが懐かしい。
なんて浮かれてたんだろう。やはりクリスマスマジックか?
プレゼントとたいした額でもない奢りで、その日を許した自分が可愛い。若かったな。
静かな丘の公園に登って来る車の音が聞こえてきた。この夜景を見に来たカップルだろうか?
少し離れた隣にその車は停まった。つい身構える。
帰ろうかしら。
ドアが開きルームランプが点灯する。車から出てきたのは初老の男だった。男は後部座席からなにやら取り出している。なんだろう?
それは割と大きなクリスマスツリーだった。引きずり車のそばに投げ捨てるのが見えた。
それから数度、車の後部座席に身体を入れ何かを取り出し、次々とツリーのそばに投げ捨てる。それはクリスマスの飾りのようだった。
そして火をつけた。
焚き火?こんなところで?
非常識じゃないかしら。
関わり合いたくなかったが、いらぬ正義感が出てひとこと言いたくなった。
「あの~こんなとこで焚き火なんて危ないんじゃないですか」
初老の男は構わず、よく燃えるようにツリーを手に取リ動かしている。
地上に輝く街の灯と同じくらいの数の火の粉が、夜空に昇っている。
男は無言で上を向いていた。
燃える炎に照らされた男のその目に涙があるのを私は気がついた。
泣いている・・・。
「あの~・・危ないんじゃないですか・・・」私の二度目の呼び掛けは小さな声になっていた。