更新日時:2016-10-11 07:09:29
投稿日時:2015-12-22 21:27:35
生きてきたという痕跡
作者: 楡井英夫
カテゴリー :現代小説
総ページ数:4ページ [完結]
公開設定:公開
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著者の作品紹介
数週間後、美香が会いに来た。雨が激しく降る日である。
「本当に私はあの人の娘なの? あれから、いろんなことを考えた。本当の父親はひょっとしたら、オジサンかもしれないとか」
この俺が父親? 少女はどこまで知っているというのか? まるで試すかのように見る。
「今さら、どうでもいいことだろ。皆川は、『お前を娘だ』と言って死んだ。そして、『金をやってくれ』とも言った。お前はその金を受け取ればいい。どう使おうと、俺には関係ない」と三千万入った紙袋を渡した。
「これからも会うことはある?」と美香が聞いた。
長い歳月が過ぎ去ったのだ。今さらどうなるものでもないし、どうしょうとも思わなかった。
「ないさ。弁護士がお前に会いに行くかもしれないが、俺は会わない。仮にどこかですれ違っても、声はかけない」と言って車を動かした。
皆川に嘘をついた。それが良かったのかどうか、いまだに分からない。だが、彼は生きてきた痕跡として美香という少女を残したことに満足して死んだのは間違いない。
「本当に私はあの人の娘なの? あれから、いろんなことを考えた。本当の父親はひょっとしたら、オジサンかもしれないとか」
この俺が父親? 少女はどこまで知っているというのか? まるで試すかのように見る。
「今さら、どうでもいいことだろ。皆川は、『お前を娘だ』と言って死んだ。そして、『金をやってくれ』とも言った。お前はその金を受け取ればいい。どう使おうと、俺には関係ない」と三千万入った紙袋を渡した。
「これからも会うことはある?」と美香が聞いた。
長い歳月が過ぎ去ったのだ。今さらどうなるものでもないし、どうしょうとも思わなかった。
「ないさ。弁護士がお前に会いに行くかもしれないが、俺は会わない。仮にどこかですれ違っても、声はかけない」と言って車を動かした。
皆川に嘘をついた。それが良かったのかどうか、いまだに分からない。だが、彼は生きてきた痕跡として美香という少女を残したことに満足して死んだのは間違いない。