からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話
今なら苦もなく簡単に止められるからタバコをやめておけと、
いうヒントをもらう。
康平が素直に、その場でタバコをやめてしまう。
昆布と鰹節から出汁(だし)を取りだしていく仕事は、目と鼻の
感覚がものをいう。
色合いと、微妙に変化していく香りを見抜く目と鼻がなによりも大切だ。
雑味のない出汁の清廉な香りを、ベストのタイミングで確実に嗅ぎ分けること。
それがなによりも大切なことになる。
(トシさんがいたら、この光景をやっぱり、一服しながら見上げるだろうか。
それはさておいて・・・・さて困ったぞ、こいつは。
どうする切るか、それとも消毒するか。
どちらにしても一筋縄ではいかないようだ。)
アメリカシロヒトリは、さなぎの形で冬を越す。
5月ころに羽化して成虫(雌)になる。
300個~800個の卵を、桜やくるみなどの葉裏へ産みつける。
卵は10日ほどで幼虫になる。
幼虫は集団で生息し、薄い白い網状の巣網を作る。
1~2週間後、分散して葉を食べあさる。
体長が約3センチ位になると繭(まゆ)を作りはじめる。
その中でさなぎになり、2~3週間ほどで羽化して成虫になる。
5~10日間の短い寿命の間に卵を産み、幼虫になると再び葉を食べあさる。
初秋になると繭(まゆ)を作り、さなぎになって冬を越す。
幼虫(毛虫)の発生時期は6月~7月と、8月~9月にかけての年に2回。
すさまじい勢いでの繁殖を繰り返す。
刺されても人体に影響はない。
アレルギー反応を示す人にすこし影響が出る程度で、実害はない。
旺盛な食害ために、サクラの木などが衰退していく。
何よりも糞で樹木の周囲が汚くなることから、発生とともに駆虫が必要になる。
康平が見上げている桑の木の高さは、10m余り。
根元から6本に分かれた幹が、天空に向かって大きく枝を広げていく。
子の高さは、ほぼ3階建てに相当する。
四方へ広がっている枝もやはり、10メートル以上にひろがっている。
ハート型の葉が、広げられた枝一杯に茂っている。
大きく茂るクワの巨木の迫力は、周囲に茂る木々をはるかに圧倒している。
クワ(桑)は、クワ科クワ属の総称。
カイコの餌として、古来から重要な作物として大切にされてきた。
甘酸っぱい味を持つ実は『ドドメ・桑の実』と呼ばれ、果樹として
利用されている。
落葉性の高木で、大きいものでは15m以上に達する。
普段見かけるものは、2メートル前後から数メートルのものが多いようだ。
養蚕が盛んだった時代には、収穫を容易にするため、幹の高さが
地上から1~2mほどに刈り込まれた。
長い年月にわたって、農家が大切に管理してきた樹木のひとつだ。
(41)へつづく
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話 作家名:落合順平