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からっ風と、繭の郷の子守唄 第36話~40話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(36)
「人の情けが身にしみる。それは互いどちらにも言えること」

  「一度目があったということは、当然、2度目もあるわけですね?」

 辻ママから徳利を取り戻した美和子が、私の番ですと言わんばかりに、
少し体を傾け、熱い目線で岡本におくる。
「年寄りをあおるんじゃない。だが、こういう状態も悪くない。
こういうのを、両手に花というのかな。あはは」
グラスに半分ほど残っていた酒を、岡本が一気にあおる。
空になったグラスを、美和子の前へ差し出す。

 「夏のことだ。午前4時になれば、もう夜明けの明るさがやってくる。
 あれほどいた野次馬の連中も、すっかりどこかに消えていた。
 酷い目にあったと、俺が車へ乗りこんだ時だった。
 静かさを取り戻した駐車場へ、辻のママがまた顔を出した。
 どうしたんだろうと見ていると、まっすぐ、俺の車に近づいてきた。
 笑顔で近づいてきたママが、
 『コーヒーを入れてあげるから、一杯飲んでから家にお帰りよ』
 と、俺に声をかけてくれた。