「恋愛病院 不倫病棟」 第三十四回
「勘ぐることはいけないと思いますけど、まさか先生と仲良くしたいと初めから思われていたという事は無いでしょうね?」
「あなた失礼なことを言うのね!看護師の分際で。先生、この人失礼だと思いませんか?私は患者ですよ」
「文子さん、早奈枝くんが失礼なことを言ったかもしれませんが、私も同じように感じるので今日はお引き取り願えませんか?診察代は要りませんから」
「先生まで私のことをそんな風に見てらしたのね。解りました。もう二度と来ません。失礼します」
文子は気分を悪くして病院を後にした。
望みが叶えられなかったことで不満が爆発してその日の夜に夫とも喧嘩して家出する羽目になっていた。
「先生、あの方本当に失礼でしたね。私って言いすぎましたかしら?」
「そうだね。口出しした気持ちは解るけど、言い方が悪かったのかも知れないなあ~もしボクが引き受けたら早奈枝くんはどうする?」
「ええ?先生があの女性とエッチしたら?という事ですか。治療なら仕方ないけど、それなら私も抱いて欲しいわ~」
「ハハハ~治療だよ。早奈枝くんや里紗くんがしているのと同じだよ。興味本位で抱くんじゃないよ」
「男性は興味が無い女性を抱けませんよ。したくなるという事は好みだという気持ちがあるからでしょ?私にはその気持ちが無く、患者さんにはあるとしたら悲しいです」
「おいおい、真剣に言うなよ。軽い冗談なんだから」
「先生のこと好きなことよ~くご存じでしょ?ここでの治療は今まで通りにしますけど、私がこんな気持ちだという事を忘れないで下さいね」
「早奈枝くん、女性を抱いて仕事することは無いから安心してくれ。これはここの方針だからこれからも変えることはしないつもりだよ。君たち二人には患者さんのために十分な治療行為を期待しているよ」
「はい、嬉しいわ。どうしても我慢出来ない時は遠慮なさらないで言ってください。でも、里紗さんには頼まないでね」
「早奈枝くん・・・」
「若さでは負けているけど、気持ちは絶対に上だから。先生の前では純真な自分で居られるの。だから変に嫉妬もするし、自分の今までが恥ずかしいとも感じる」
早奈枝はたくさんの男性から好きと言われてきた。夫とはわがままな自分で居れるから結婚した。
鉄男への思いは心から好きと言う偽りのない気持ちに思えていたのだ。
ここでは少女の時の自分が居る。
作品名:「恋愛病院 不倫病棟」 第三十四回 作家名:てっしゅう