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聖夜の女神様

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準備に明け暮れる放課後



 私は、それから週1、2回のペースで有栖先輩と被服室で密会していた。

 私が女神様の役をすることは門外不出の件で、有栖先輩の目にかかった人以外知ることができないことになっている。
 一般の生徒は勿論知らない。それどころか、生徒会長、―つまり晴斗も、知らないらしい。
「生徒会主催といってもイブパーティにおいては私が責任者だから、晴斗よりも偉いから良いのよ」
 と、有栖先輩はのたまう。
 この秘事については、完璧なまでに秘密にされているので、全生徒が知らないらしい。
 それでも、イブパーティの花形が気になる人は沢山いて、よく有栖先輩が「女神様誰やるの?」と質問攻めにあってるのをよく見掛ける。その時、有栖先輩は「イブパーティまでの、お・た・の・し・み・よ。」とか言って軽くあしらってしまう。
 そのあしらう姿はとても素敵で、有栖先輩に憧れるときのベスト3に入っている。

 だが、それでもバレてしまうことを懸念した有栖先輩は、私を調理部門のサブチーフにした。調理部門とはイブパーティの料理を作る生徒達の集まりのことだ。生徒手作りのイブパーティのおいしい料理は、イブパーティの魅力の一つである。
 こうでもしておけば、私と有栖先輩が被服室で密会していても、調理部門の打ち合わせに見えるからバレる心配はない、と有栖先輩が考えた。調理部門チーフの美空先輩にも事情は話しているので、美空先輩が色々上手く隠してくれている。
 なんとも用心深い。
 でも、私自身料理を作ることが好きなので、調理部門で過ごす日々は楽しい。予算内でどんな料理が作れるか、どのような手順で行うかなど、みんなで考えるのは楽しい。

 ところで、勉強の方は?と聞かれると、放課後の勉強だけカットして、朝、昼、夜、と相変わらず勉強の虫にている次第。
 時々『学園始まって以来二人目の天才』有栖先輩が勉強を見てくれる。教え方がすごく上手なので、とても実になる。
 と、こんな感じで、私のこの頃は充実している。
 まるで野球部のマネージャーをやっていた頃を包沸させるような、感じです。

 それにしても、有栖先輩の存在は大きい。週1の有栖先輩との密会は、密会と言っても大して大袈裟な話し合いをしているわけではない。ゆるい雰囲気で、私たちはどうでもいいことを話している。有栖先輩は本当にお姉さんの様で、ついなんでも話したくなるくらい、安心できる。案の定、あの有栖先輩の強引なペースで、晴斗のことについての話をさせられるわけだが、意外にそれは苦痛ではない。
 むしろ、晴斗との出会いやマネージャーになった理由を話すことで、なんだかスッキリしている自分がいる。たぶん有栖先輩が子供の様に私の話を聞いてくれるから、つい話したくなるのかもしれない。

 だから私は有栖先輩に、封印しようと思っていたあの事を話すことができた。
 
 晴斗が別のマネージャーとキスをしていた、あの時のこと。
 私はそれが原因で野球部のマネージャーを続けられなくなったと言っても過言ではない。
 本当はどうしようもない家庭の都合があって、辞めざるを得なかったんだけど。

 そのことを話したら、有栖先輩は大きなため息を吐いたかと思うと、大きく憤った。

「花ちゃんという素敵な女がいるというのに、何他の女にキスされてるの!?ミスター恋愛鈍感晴斗といえども阿呆にしては程が過ぎるわ!馬鹿よ!いや、外道畜生よ!」

 という具合に。有栖先輩は終始私の味方でいてくれた。

 胸の中に潜め続けていたどす黒いものを全て話した時、なんだか凄くすっきりしたし、有栖先輩がものすごく憤慨してくれたことがとても嬉しかった。おかげさまで私の記憶に影を差していたあの出来事が幾分か軽くなった気がした。

 私の嫌な思い出をこんなふうに軽くしてしまう力があるなんて、やっぱり有栖先輩は凄い人だ。


作品名:聖夜の女神様 作家名:藍澤 昴