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lesson.3


 岬は判らなかった。
 何故、水野亜紀を自分を巻き込んだのか。
 休み時間に水野は岬の前に来て、岬の腕を握り何処かへ連れ去ってしまった。

「え、何?」

「理由聞きたいんでしょ?」

「まあ、それは」

「じゃあついて来て」


    15分後


「…もう授業始まってるよ?」

「大丈夫。先生には言ってあるから」

「え…」

「私、天下を取りたいの」

「うん。今の勢いなら取れるんじゃないかな」

「アイドルとしてではなくてでも?」

「え?でも…水野さんは」

「亜紀でいいわ。同級生なのにさん付けなんてアレだしね。私も岬って呼ばせてもらうけど」

「うん、それはいいけど…でもアイドルじゃないなら一体…」

「歌手よ」

「そう、なんだ…」

「以外かしら?」

「うん」

「最初は役者の道も考えたけど自分で無理と悟ったわ」

「どうして?」

「岬を見たからよ、映画で。岬の演技を見た瞬間馬鹿な事を考えていたのだと、そう考えなおしたわ」

「そんな、私は…」

「岬、貴女には才能があるわ。芸能界で生きて逝けるだけの」

「でも前の事務所の事があるし…」

「事務所問題は確かに難しいわね…そんな簡単に変えられないし」

「まるで移籍するみたいな言い方だね…」

「かもね、いつかは」

「私ね、ずっと考えていたの」

「何を?」

「ルーレットの人気№1だった彩佳さんが何故突然芸能界を去ったのかを」

「それは…」

「もちろん本人の都合もあるでしょう。でもそれだけじゃない気がするの」

「どうして?」

「会見で彩佳さんは貴方達を才能の塊と言っていたわ。きっとそれは当たっている。そして自分では敵わない才能がその中にある事を彼女は自覚したの。だからその才能を潰さない為に彼女は芸能界を去ったの。それは貴女よ、岬」

 こんな場所に呼んで何を言い出すのかと思えば…

「取り合えず、私は道を付けたから」

「道?」

「岬が芸能界という世界へ返り咲く道よ」

「じゃあ、もしかして今回の劇は…」

「戻りたいのなら本気で取り組みなさい、演技というものに」

 そう言い残し、水野は学校へ帰って行った。
作品名:ステップ・アップ!! 作家名:本宮麗果