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ホクホクタロウ
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novelistID. 58181
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『迷子』

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話を整理しよう! さとしの家に向かった俺はひとまずさとしのお母さんにこれまでのいきさつを話し、さとしもお母さんに謝った。それを見て俺は帰るつもりだったが、付き合わせてしまって申し訳ないから家に上がっていってくださいと言われ、俺も時間つぶしでいただけですからと断ったのだがお母さんの押しに負け今に至っている。
さとしがテレビに夢中になっている最中、俺はお母さんに聞いてみた。
「さとしくんって兄弟とかいるんですか?」
「いえ、いないですよ」
「そうなんですか」
「兄弟がいないことで寂しい思いしてるんじゃないかなって。あの子から言い出したんですよね? 一緒に遊ぼうって」
「そうですね。こんなこと言うのは何ですけど、大丈夫だと思いますよ。いつのまにかにそういう人たちが学校の中に出てきますから」
「そうでしょうか?」
「夢を目指すのってありですよね?」
「いきなりどうしたんですか?」
「いえ、会ったばかりの人にこんなこと話すのはどうかと思うんですけど、親に反対されてて」
「私も画家になりたくてあなたと同じ位の年に親の反対押し切って行動しました。悔いはありません。アルバイトしながらお金貯めて学費も払いましたし。結果は夢叶わずでしたけど、でもやるのは自分ですから、その思いを大事にしていいかと」
「親に言われるままで何も言えなくて腹たって出てきたんですよ。そしたらさとしくんに会って。俺もやりたいことをやりたいって言えた頃があったなと」
「道を開くのも閉じるのも、または道を作るのもふさぐのも、全て自分次第です」
「・・・ゲーム認めてあげてもいいのではないですか?」
「あの子ったらもう」
「ゲームやってる時のさとしくん、いきいきしてましたよ」
「考えておきます」
それから俺は夕食もご馳走になった。ただ何もしないのは申し訳ないと思ったので、さとしと3人でご飯を作った。さとしは嫌そうだったが、お母さんは嬉しそうだった。その流れでゲームの話をしたらお母さんも認めてくれた。ただし家事を手伝うという条件付きではあったが、認めてくれたことが嬉しかったさとしは嘘のように俺に何度もありがとうと言ってきた。
「太一、いや太一さん本当にありがとう。ゲームもしていいって言われたし、うれしいよ」
「ちゃんと洗濯とか料理とかするんだぞ」
「わかってるよ」
「遅くまですみませんでした」
「いえいえ」
「それじゃ失礼します」
「またな太一」
「太一さんだろ」
帰り道、俺はさとしのお母さんが言ってた言葉を思い返していた。道を開くのも閉じるのも、作るのもふさぐのも全て自分次第、か。もしかしたら俺は親の反対を理由に自分から道を閉ざしふさいでいただけなのかもしれない。実際反対されてからは文化祭終わりでみんな疲れてるだろって名目でここ2週間位バンドの活動もほどんどしてなかったしな。まずはバンド活動を再開して、とりあえずクリスマスライブに向けて新曲引っさげてやるのも面白いかも知れない。早速みんなに連絡だ。俺は気持ちを切り替え心機一転でバンド活動に打ち込むのだった。

作品名:『迷子』 作家名:ホクホクタロウ