俺のフォルダだけは見せられない!
野鳥フォルダの世界も、そして妻たちを閉じ込めたZIPもなくなっていた。
いくら探してもフォルダは見つからなかった。
あれだけ嫌っていたのに、うっとおしかったのに。
二度とみられないと思うと体は捜索を辞めなかった。
「いったいどこへ行っちゃったんだよ……」
もうフォルダ世界を作る気にもならなかった。
『ごみ』フォルダなんかに入れていなければ……。
「ごみ……ごみ箱……そうか!
もしかして、フォルダ世界は削除されたのかもしれない!」
俺は地面に手をついてフォルダ作成を新しく作成した。
すると、ふたたび空に青いフィルターが現れた。
「あの青いフィルターはフォルダに反応するのか!
だったら!」
俺は作りたてのフォルダ世界に入った。
それからすぐに世界がどこかに移動する震動を感じた。
まるでエレベーターでどこに運ばれるような。
震動が収まってからフォルダ世界を出ると、
あたりはフォルダ世界だらけになっていた。
「こんなにフォルダ世界が……。
きっとここはゴミ箱の中か」
俺は山積みにされているフォルダをかきわけて。
『ごみ』のZIPフォルダを見つけ、チャックを開けてフォルダを解凍した。
現れた『ごみ』フォルダに上半身を突っ込んで、
フォルダ世界にいる妻に手を伸ばした。
「あなた! どこへ行っていたの!?
どうしても聞きたいことが……」
「そんなのは後だ! いいから早くここを出るぞ!」
妻の手を引いて、親とともにフォルダ世界から脱出する。
それからすぐにゴミ箱フォルダの世界からも脱出する。
俺たちが脱出したすぐ後で
ゴミ箱に残っていたフォルダ世界は
跡形もなく削除されてすっきりした。
な、何とか間に合った……。
「あなた、どういうことなの?」
まだ頭に?マークが浮かんでいる妻を抱き寄せた。
「俺が悪かった。全部俺が悪いんだ。
君のことなんて考えようともしなかった。
自分の世界なんてもうどうでもいい。
君と一緒に作る世界が俺の居場所なんだ……!」
「あなた……!」
妻も俺の愛に応えるように、強く抱き返した。
「私もあなたと別れてから、
あなたの大事さがよくわかったわ」
「ああ、俺もだよ」
俺はこの家族を一生守りたいと心から思った。
fin.
「……そういえば、
俺にどうしても聞きたいことがあるって言ってなかった?」
「ああ、それね」
妻の顔が一気に変わった。
「閉じ込められていた先に
あなたの『不倫』『浮気』フォルダがあったんだけど
あれはいったいどういうことかしら?」
作品名:俺のフォルダだけは見せられない! 作家名:かなりえずき