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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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乙女たちの幻想曲 第1回 Secret Garden

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Secret Garden



杉崎彩(すぎさき あや)は、いつかこんな夢を見た。

 彩は、そんなに新しくない折り畳み椅子に座って、ベッドの中の恩田水音(おんだ みおん)の少し青ざめた顔を見つめていた。
 彼女は、半開きの目を彩に向けると、
「私…もう長くはないわ」
 と小声で言った。彩は心配そうに尋ねた。
「えっ、そうなの?」
「ええ、そうよ」
 暗いピンク色のストレートの長髪は、彼女の白く透き通った肌によく似合う。
「ねえ水音、水音は、本当は旅立つのは嫌?」
 彩が尋ねると、水音は一瞬、悩んだ顔をして答えた。
「嫌じゃないと言ったら、それはうそね」
「そうなのね」

 まだ不安そうな顔をする彩に、水音は、慰めるような優しい眼差しを親友に向けた。
「ねえ彩」
「なあに、水音」
「お別れの前に、あなたにしてほしいことがあるの」
 彼女の声はそれまでよりも小さくなっていたので、彩は美しき親友に自分の顔を近付けた。
「ごめんなさい?」
 水音は、大きくまばたきをして言った。
「お別れの前に、あなたにしてほしいことがあるの」
「どんなこと?」
「西にあるあの庭に行って、そこに咲いている白い花を1輪摘んできて。そして、それを私の髪に挿してほしいの」
 彩は、水音の顔を無言でじっと見ると、尋ねた。
「白い花?」
「ええ、白い花。あなたがここに戻ってくるまで、私は死なないから」
 彩は黙ってうなずくと、部屋を後にした。